【7月6日 AFP】5日に行われた20F1開幕戦のオーストリアGP(Austrian Grand Prix 2020)では、レース開始前に人種差別に対する抗議が行われたが、膝つきに参加しないドライバーも6人いた。メルセデスAMG(Mercedes AMG)のルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)は、自身の差別との闘いは「平等のためのものであって、政治や宣伝目的ではない」と強調している。

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 決勝ではオーストリア国歌演奏の前に、F1で唯一の黒人ドライバーであるハミルトンが「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」Tシャツを身につけ、他の選手も「人種差別を終わらせよう」と書いたTシャツをまとってグリッド前方に整列したが、20人のドライバーのうち6人は膝をつかずに立ったままだった。

 フェラーリ(Ferrari)のシャルル・ルクレール(Charles Leclerc)とレッドブル(Red Bull)のマックス・フェルスタッペン(Max Verstappen)は膝をつかないと事前に表明しており、マクラーレン(McLaren)のカルロス・サインツ・ジュニア(Carlos Sainz Jr.)、アルファタウリ(AlphaTauri)のダニール・クビアト(Daniil Kvyat)、アルファロメオ(Alfa Romeo Racing)のアントニオ・ジョビナッツィ(Antonio Giovinazzi)と年間王者経験者のキミ・ライコネン(Kimi Raikkonen)も膝はつかなかった。

 ハミルトンは自身のインスタグラム(Instagram)で「きょうは僕にとって、また変化やもっと平等で公正な社会を目指し、願う全ての人にとって、重要な一日になった」と話した。

「メディアなどの各所から批判はあるかもしれないが、この闘いは平等のためのものであって、政治や宣伝目的ではない」「僕にとっては、F1がもっと多様で包括的なスポーツへ前進したことを示す感動的で胸を打つ一幕だった」

 しかしハミルトンは、この問題への「理解が足りない」選手がいるともほのめかしており、何人かのドライバーにいら立っていたとみられる。レース前に自身の考えを他のドライバーに説明したハミルトンは、沈黙は「差別に加担しているも同然だ」と話していた。

 ハミルトンはインスタグラムで、「完璧な人間などいないが、全員が参加して自分の役割を果たせば、変化を起こせる。僕はそれを信じている」とも話している。

 一方のルクレールは、レース前に自身のツイッター(Twitter)で次のように説明した。

「全20人のドライバーが、それぞれのチームと団結して差別や偏見と闘い、同時に多様性と平等、包括性の原則を歓迎し、F1と国際自動車連盟(FIA)の誓約を支持する」「大事なのは日々の暮らしの中での事実や振る舞いであって、国によっては物議を醸しかねないポーズを取ることではないと信じる」「膝はつかないが、他の人よりも差別との闘いに熱心でないわけでは全くない」

 フェルスタッペンも「平等や差別との闘いに非常に力を入れている」「しかし、誰にでも自分に合ったタイミング、方法で自分を表現する権利があると信じている。きょうは膝をつかないが、全ドライバーの個人的な選択を尊重し、支持している」とつぶやいた。(c)AFP