【7月4日 Xinhua News】中国湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)の華中科技大学同済医学院付属協和医院は2日、記者会見を行い、中日両国の医療専門家による国境を越えた命のリレーが成功したと発表した。同医院心臓大血管外科主任の董念国(Dong Nianguo)教授によると、患者は順調に回復しており、一定期間のリハビリを行った後で通常の生活が可能になるという。

 患者の父、孫さんは2日、「娘が名古屋から武漢に無事に搬送され、心臓移植手術も受けることができた。本当に感謝している」と語った。

 孫さんの娘、玲玲(れいれい)さん(仮名、24)は、2年前に訪日し、愛知県内の電子機器メーカーで働いていたが、不適切な薬の服用で重度のアレルギー反応を引き起こし、腎臓と心臓の機能が低下した。昨年5月、同県の藤田医科大学病院に入院し「巨細胞性心筋炎」と診断された。

 9月には体外式補助人工心臓の装着手術を受け、術後にはベッドから降りて歩けるようになったが、この病気を根本的に治療するには、心臓移植を受けなければならなかった。さまざまな理由から日本で移植手術を受けることは難しかったが、直ちに手術をしなければ、命に危険が及ぶ可能性もあった。

 娘を心配した孫さんは今年1月19日、華中科技大学同済医学院付属協和医院を訪れて董念国氏のチームと緊密に連絡を取り、玲玲さんを帰国させて移植手術を受けることを決めた。だが、新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していた1月24日の武漢行きの便が欠航になった。

 玲玲さんが使っていた2個の遠心ポンプは、3カ月ごとに交換する必要があり、それまでも細菌感染や脳梗塞などの合併症を起こしていたため、できるだけ早く中国に搬送する必要があった。3月に入り、名古屋から武漢への国際搬送計画が再スタートした。

 董氏は、今回のような患者の搬送は容易でなく、民間航空機を改装して専用のストレッチャーベッドや各種医療機器を設置する必要があったと説明した。

 各方面の綿密な準備により、さまざまな難題を一つずつ克服。万全を期すため、中日双方の医療チームはリハーサルも行った。

 6月12日午前9時、中国南方航空のチャーター便が武漢を離陸し、中部国際空港に向かった。患者を迎えるために協和医院心臓大血管外科の複数の医師も搭乗した。午後3時、同機は患者と搬送担当の医療チームを乗せて帰路に就いた。藤田医科大学病院で治療を担当した心臓血管外科の高味良行教授は見送りの際、毛筆で「救患若一、所憂同也」と書いて贈った。

 チャーター便は午後6時27分に武漢に着き、玲玲さんは午後8時15分に協和医院の心臓外科病棟に到着した。これにより数カ月にわたり準備された国際的な搬送が無事完了した。

 協和医院心臓大血管外科の李平(Li Bing)医師は「日本の医療専門家チームが患者に心血を注いだおかげで、人工心臓がここまで長く維持され、各種バイタルサインや全身状態も良好だった。本当に素晴らしく、彼らの尽力に感謝する」と語った。

 6月25日、同医院の専門家20人余りが心臓移植手術を実施。約7時間に及んだ手術は無事成功した。(c)Xinhua News/AFPBB News