世界中で感染が拡大しているコロナウイルス、難民もまたその脅威にさらされている。
この写真は、シリア避難民の少女たちがアーティストによって絵が描かれたマスクをしている写真である。シリアでは今もなお紛争が続き、多くの人々が困難な状況に置かれている。十分とは言えない衛生環境、医療設備で、もし難民たちの間で感染が広まってしまったらどうなるだろうか。悲惨な結果になるであろうことは目に見えている。今、彼らに必要なのはマスクや消毒液といった衛生用品はもちろん、暗く苦しい状況の中で少しでも明るく前を向くための工夫も必要なのではないだろうか。息苦しいマスクが、絵を描くことで着ける楽しみに変わり、それが命を守ることへと繋がっていけばいいと思う。
[獨協大学 大塚 美咲]

[講評]野末俊比古(青山学院大学教育人間科学部教授)
 新型コロナウイルス感染症は、人を選ばずに襲ってくる。難民の子どもたちも例外ではない。子どもたちのマスクをよく見るとイラストが描かれている。アーティストが描いたものである。医療などの支援ももちろん重要だが、こういうかたちの支援もあるのだと感じることができる。医師や看護師でなくても、一人一人にできることがあると思わせてくれる。コメントにある「少しでも明るく前を向くため」という思いは、こういうときこそ大事なものだろう。思いのこもったマスクが子どもたちを守り、この“戦い”が勝利のうちに終わることを願わずにはいられない。
 応募者がつけた「希望のマスク」というタイトルが、写真とともに見る者の心にすっと入ってきて、「自分には“希望”に向かって何ができるだろうか」と考えさせてくれる作品である。