友人たちによりカートで運ばれる、男性の遺体。ケニアのスラム街で起きた、抗議の様子だ。彼の死因はコロナウィルスでなく、暴行によるものである。
同国政府はウイルス対策として、夕暮れから夜明けまでの夜間外出禁止令を施行している。彼は前夜に通りを歩いていたため、パトロールしていた警察官に殴打された。人権活動家曰く、同国ではウイルス以上に警察の残虐行為による死者数が多い。
ウイルスは、感染者の健康だけではなく、非感染者の良心をも蝕んでいくのか。感染者に対する過剰な嫌がらせや、マスクを巡る殴り合いなど、人間の醜さや愚かさを思い知らされる報道は、先進国でも後を絶たない。得体の知れない恐怖から必死に身を守ろうとする、人間の弱さに起因しているのだろうか。
しかし、脅威に立ち向かうために必要なのは、排斥的な態度ではない。今こそ、民族や年齢、地位に関わらない全人類のチームワークが試される、史上初の重大な局面である。(ペンネーム:あおい)
[早稲田大学]

 [講評] 羽場久美子(青山学院大学国際政治経済学部教授)
 皆が一人の死者を弔い抗議しつつ運んでいる。これはコロナの死者ではなく、ケニア・ナイロビのスラムで、警察の殴打によって殺されたのだ。ケニアではコロナの死者数よりパトロールする警官による死者数のほうが多いといわれる。至るところで起こっているアメリカ警官の黒人殺害事件を彷彿とさせる事件が、5月初旬にケニアでも起こっている。
 Black Lives Matter!「今こそ、民族や年齢、地位に関わらない全人類のチームワークが試される、史上初の重大な局面である。」とする評者のコメントは温かく深い。こうした事件が世界各地で起こっている。「Stay home」が不可能なホームレスや負債を抱えて自殺する人たち、そしてコロナで亡くなっている多くの高齢者たちの写真もその背景に見透かせる。貴重な映像及びコメントである。