【7月2日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬に一定の効果が認められた米製薬会社ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)の抗ウイルス薬「レムデシビル」について、米政府は今週、9月末までの生産分の92%を買い上げたと発表した。約55万人への投与量のうち、50万人分を米国が買い占めたことになる。これを受け、英国とドイツは1日、現在のところ十分な量を確保していると相次いで表明した。

 アレックス・アザー(Alex Azar)米厚生長官は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が「世界で初めて認可されたCOVID-19治療薬を米国人が確実に利用できるよう、素晴らしい合意を結んだ」と述べた。米国内の新型コロナによる死者は12万7000人に上り、世界で最も多い。

 レムデシビルは、1人の治療に平均6.25本分が必要とされる。米国の買い占めにより、世界でレムデシビル不足が起きるとの懸念が広がった。

 ギリアドはAFPの取材に、インド、パキスタン、エジプトの製薬会社9社にレムデシビルのジェネリック医薬品(後発医薬品)の生産ライセンスを無償で提供しており、発展途上国127か国に供給されると説明。その他の国については、「まず規制当局の承認・認可と罹患(りかん)率に基づいて、レムデシビル供給の優先度が決まる。次に、重症度に基づいて判断し、最も緊急性の高い患者に優先的に提供される」と述べた。

 レムデシビルは米国内の工場の他、北米や欧州、アジアの提携企業でも生産して「供給の規模を拡大する」としている。

 米ジョージタウン大学(Georgetown University)の保健法の専門家マシュー・キャバノー(Matthew Kavanagh)氏は、「世界各国は直ちに、レムデシビルをはじめとするCOVID-19治療薬に対し(特許技術を政府機関や第三者が自由に使えるようにする)『強制実施権』を発動するための協調した取り組みを発表し、開発元の製薬会社が必要な治療薬の生産を阻止できないようにするべきだ」と語った。(c)AFP