【7月1日 AFP】オーストラリアは1日、防衛関連支出を大幅に増額する新たな防衛戦略を発表した。中国との緊張が高まる中、長距離攻撃能力やサイバー攻撃対策を増強する計画だ。

 スコット・モリソン(Scott Morrison)首相によると、今後10年間で防衛力強化のために関連支出を40%近く増額し、2700億豪ドル(約20兆円)を充てる。国防軍の重点をインド太平洋地域全体に大幅に移す方針。

 モリソン首相は演説で、米国の絶対的覇権の終わりと強硬さを増す中国の台頭に目を向け、「新たな不穏な時代に突入するという現実に向き合わなければならない」と述べた。

 米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が同盟国に対し、防衛力の強化を憤然と要求したことを受け、豪政府は国内総生産(GDP)の少なくとも2%を防衛費に充てることを明言。2016年の国防白書を見直し、防衛関連支出を4割増やした。
 
 増額分は主に兵器システムに投じるとしている。一つには豪本土から数千キロ離れた目標物を狙うことができる攻撃能力を獲得するとして、手始めに米国の長射程対艦ミサイル「AGM-158C」の購入が挙がっている。さらにドローンなどの新たなプラットフォームに投資する他、レーザーなどの極超音速兵器やエネルギー指向性兵器の研究開発を推進するという。

 中国の公式発表によると、同国は2020年だけで約19兆円を防衛費に充てている。

 人口2500万人のオーストラリアは域内の敵対国に対抗できないことをモリソン首相は認めた上で、自国を「強制力や覇権の存在しない、開放的で主権が尊重されたインド太平洋地域」を目指す地域大国と位置づけている。(c)AFP/Holly ROBERTSON