【7月1日 AFP】チェコのミロシュ・ゼマン(Milos Zeman)大統領(75)は6月30日、反人種差別運動の「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」というスローガンは人種差別的だと述べた。

 ゼマン氏は、7月4日の米独立記念日を前にチェコの首都プラハの米大使館で、1949年に出版された英作家ジョージ・オーウェル(George Orwell)のディストピア(反ユートピア)小説「1984年(1984)」に出てきた言葉を使って、「Black Lives Matter」運動の指導者らを市民の行動に目を光らせる「ビッグブラザー」になぞらえた。

 大統領報道官によると、ゼマン氏は、「全ての命は大切なのであって、それ故に『黒人の命は大切』というスローガンは人種差別的なスローガンだ」と述べた。

 「Black Lives Matter」運動では、黒人は他の人種の人たちよりはるかに命が大切にされてこなかったと主張している。

 親ロシア、親中国で左派のゼマン氏は、米大使に向けて英語で、「両国で起きている路上での暴動、車の炎上、像の破壊」は市民、信仰、国家の独立性への攻撃だとして厳しく非難した。

 欧州連合(EU)加盟国のチェコでは、第2次世界大戦(World War II)当時の英首相ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)の像に「彼は人種差別主義者だった」 「Black Lives Matter」などと落書きされていた。

 「Black Lives Matter」はおおむね平和的な運動だと見なされている。米国と欧州のデモ参加者らは奴隷を所有したり、植民地支配を推進したりした歴史上の人物の像を標的にしている。

 5年の大統領任期の2期目を2023年まで務めるゼマン氏は、「自分たちを価値観のリーダー、さらにはオピニオンリーダーとまで言うばか者ども」を非難。「われわれには自由な思想、常識が必要だ」とした上で、「1984年」に出てきた言葉を使って「われわれにはビッグブラザーは必要ない」と述べた。(c)AFP