【6月30日 Xinhua News】中国科学院武漢ウイルス研究所の崔宗強(Cui Zongqiang)研究員らがこのほど、エボラウイルスが細胞へ侵入する動的プロセスとメカニズムを明らかにしたと発表した。ウイルスの感染メカニズムを深く理解する上で重要な成果であり、抗ウイルス薬などの開発につながると期待される。

 吉林省(Jilin)長春市(Changchun)にある長春工業大学(Changchun University of Technology)の単玉萍(Dan Yuping)教授と北京市にある国家ナノ科学センターの施興華(Shi Xinghua)研究員による共同研究。エボラウイルスは人類にとって最も致死性の高い病原体の一つで、感染すると重度の出血熱を引き起こし、致死率は最大で90%に達する。

 研究ではまず、フィラメント(細長い糸)状のエボラウイルス様粒子を作製し、蛍光標識した。ウイルス様粒子は野生型エボラウイルスと同程度の感染力を持つが、核酸が入っていないため子孫ウイルスは複製されない。崔研究者らは、一つの粒子の動きを追跡する単粒子追跡法(SPT)や分子などの動きをコンピューターでシミュレートする分子動力学シミュレーションなどの手法を用いて、ウイルス様粒子が細胞へ侵入する動的プロセスを追跡し、その動的メカニズムを解析した。

 その結果、細胞への侵入様式は垂直型と水平型の2通りあることが確認された。ウイルス感染の時空間やエネルギー、受容体(レセプター)との結合の仕方、侵入経路など細かいメカニズムも分かり、細胞が比較的大きな物質を取り込むマクロピノサイトーシス(マクロ飲作用)を介して細胞に侵入する様子も可視化できた。

 研究成果はアメリカ化学会(ACS)が発行する学術誌「ACS Nano」(電子版)に掲載された。(c)Xinhua News/AFPBB News