【6月30日 AFP】中国の研究者らは29日、新型の豚インフルエンザが確認され、パンデミック(世界的な大流行)が起きる可能性もあると、米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した。

【図解】20世紀に流行の感染症、命落とす危険性はるかに高く 今世紀との比較

「G4」と名付けられた新型豚インフルエンザの株は、遺伝的に2009年に流行した豚インフルエンザH1N1に由来するという。発表した中国疾病予防抑制センター(Chinese Center for Disease Control and Prevention)と同国の複数の大学の研究者らは、「高度に適応して人間への感染力を持ちやすい全ての本質的な特徴」を備えているとして警鐘を鳴らしている。

 研究者らは2011年から2018年にかけて、中国10省の食肉処理施設と動物病院1か所で、豚の鼻腔(びくう)から綿棒で3万点の検体を採取し、179株の豚インフルエンザウイルスを分離した。その大半が2016年以降に豚の間で流行している新型だったという。

 これら分離されたウイルスを用い、人間と似た発熱、せき、くしゃみといったインフルエンザ症状を示すフェレットを使ったものを含むさまざまな実験を行ったところ、G4は感染力が強く、ヒトの細胞内で複製を行った他、フェレットでは他のウイルスよりも深刻な症状が観察された。

 また実験では、季節性インフルエンザへの感染で獲得される免疫は、G4に対する防御効果がないことが明らかになった。

 養豚関係者を対象に実施した抗体検査では、10.4%が過去に感染したことがあるとの結果が出ている。同じ検査で、養豚関係者以外の一般の人々の抗体保有率は4.4%となっている。

 そのため、豚からヒトへの感染がすでに起きていることは明らかだが、科学者らが最も懸念するヒトからヒトへの感染が起きるかどうかについては証拠がまだない。(c)AFP