【6月29日 AFP】警察の拘束下で米黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)さんが死亡した事件を受けて世界に広がった人種差別問題をめぐる議論の中で、国際的な注目を浴びるようになったフランス人女性がいる。アッサ・トラオレ(Assa Traore)さん(35)は4年前、弟のアダマ・トラオレ(Adama Traore)さん(当時24)が警察に逮捕された直後に死亡するまで、社会運動とは全く無縁だった。

 3人の子の母親であるアッサさんは今や、警察の暴力と人種差別に立ち向かう象徴的存在として世界に知られ、米黒人政治運動家の名前にちなんで「フランスのアンジェラ・デービス(Angela Davis)」と呼ばれている。

 アッサさんは28日、米ケーブルテレビ局BETがアフリカ系米国人やマイノリティーの人々に贈る文化賞「BETアワード(BET Awards)」で、「グローバルグッド賞(BET Global Good Award)」を受賞した。BETのウェブサイトによると、同賞は「自らの立場を社会的責任と善行に活用し、世界の黒人コミュニティーの福祉に尽くしている公人」を表彰するものだという。

 受賞に先立ちAFPの取材に応じたアッサさんは、「アダマに正義を」とプリントされたTシャツ姿で、「私たちが4年間取り組んできた全てが報われる。未来への力にもなる」と語った。

 2016年の弟の死以後、アッサさんは社会運動を起こし、抗議デモを主催し、人々に向かって演説し、無数の取材を受けてきた。ソーシャルワーカーの仕事を辞めて活動家に専念しながら、パリ郊外のアパートで小さな子どもたちと暮らしている。

「アダマのための闘い」はずっと地域レベルの運動にとどまり、フランス国外では全く知られていなかった。それが、フロイドさんの事件をきっかけに世界中で注目されるようになった。

 6月初めにはパリで大規模の抗議デモが行われ、全国的なデモも展開されて若い世代が関心を寄せるようになった。人生で初めてデモに参加したという女性(24)は、「私も友人たちも皆、アッサのファンなんです。近所の女の子たちは彼女のおかげで政治に興味を持つようになりました」と話した。