【6月28日 AFP】中国とインドとの間で今月発生した衝突の直前、中国が境界線付近に配置された軍部隊に、登山家や格闘家らを配属させていたことが分かった。中国国営メディアが報じた。

 山岳地帯に位置する係争地域では、双方とも核保有国である両国関係が緊迫する事態はまれではない。だが今月起きた衝突では、過去50年以上で最多の死者数を出す事態となった。

 中国の軍事紙「国防時報(China National Defense News)」によると、チベット自治区(Tibet Autonomous Region)の区都ラサ(Lhasa)で今月15日、エベレスト(Mount Everest)に登頂した五輪の聖火リレー登山隊の元隊員や、総合格闘技チーム所属の格闘家らが所属する新たな民兵隊5部隊が査閲を受けた。

 中国中央テレビ(CCTV)は、ラサで数百人もの民兵隊員らが整列する様子を捉えた映像を放送。

 また国防時報の報道によると、チベット軍区の汪海江(Wang Haijiang)司令官は、格闘技クラブ「恩波格斗(Enbo Fight Club)」の新入隊員らが部隊の「組織動員力」および「迅速な対応・支援能力」を大幅に向上させるだろうと述べた。

 だが、この部隊の配置と中印国境で続く緊張状態の関連性について明確に認めることはなかった。

 そしてその後、ラサから1300キロ離れたラダック(Ladakh)地方で中印両軍が、過去数十年で最も激しい衝突を繰り広げた。インド側は、この乱闘で同国軍兵士20人が死亡したと発表。一方で中国側も、数は不明ながら人的損害が出ている。

 両国軍は互いを非難し合う一方、両者が締結している協定により火器の使用は防止されている。ただ、石やこん棒といった単純な武器を使用した乱闘はそれでも激烈なものとなった。

 中国国営メディアはここ数週間にわたり、インドと接するチベット自治区における軍事活動を取り上げている。

 また国防時報は、新部隊が「国境の強化とチベットの安定化」のために導入されたと伝えている。(c)AFP