【6月28日 AFP】2019年ラグビーW杯日本大会(Rugby World Cup 2019)を制した南アフリカのラシー・エラスムス(Rassie Erasmus)ヘッドコーチ(HC)が、表彰式で一緒にトロフィーを受け取ろうとシヤ・コリシ(Siya Kolisi)主将に促されたものの、申し出を辞退していたことが試合から8か月越しで分かった。

 映像を見ると、チーム史上初の黒人主将であるコリシが、選手たちの後ろにいるエラスムスHCのところへ行き、一緒に前へ出て特別な瞬間を共有しようと熱心に誘っているが、HCはそれを断り、結局は前へ戻ったコリシが一人でトロフィーを掲げた。

 カメラが喜びに沸くスプリングボクス(Springboks、南アフリカ代表の愛称)にズームする中、選手として代表36キャップを刻んでいるエラスムスHCは、最初どこにいるかも分からない状態だった。

 このエピソードについて、匿名を条件にAFPのインタビューに応じたエラスムスHCの親友は、目立つのを嫌い、選手が主役であってほしいという指揮官の考え方を象徴する出来事だと話している。

「映像を見て、いかにもラシーっぽいと思ったよ。彼にとってW杯優勝はすべて選手の功績なんだ」

「これまでを振り返っても、ラシーは選手時代、そして指導者転向後を通じて、記者会見や取材の場がラグビーで一番嫌いな場所だった」「すごく引っ込み思案な男で、チームを第一に考えている。選手全員から非常に尊敬されているのはそれが理由だ」

 それでも、アリスター・クッツェー(Allister Coetzee)前HCから指揮官の座を引き継いだエラスムスHCは、わずか18か月でチームを笑われものからW杯王者へ生まれ変わらせ、日本大会では決勝でイングランドを32-12で下し、1995年大会と2007年大会に続くW杯優勝に導いた。(c)AFP