■ワクチン:時間との闘い

・開発中のワクチンはいくつあるか

 6月16日時点では、WHOが確認しているだけで11件のCOVID-19ワクチン臨床試験が世界各地で個別に進められている。臨床試験の半数以上は中国で実施されている。

 全世界では、開発中のワクチン候補は大半が第1相臨床試験の段階にある。第1相試験は3段階の臨床試験の最初の段階で、安全性の検査を目的とする。第2相臨床試験に進んでいるワクチン候補は数種のみで、第2相試験では第3相試験とともに有効性が調べられる。

 結果については、これまでのところ一部しか公表されていないが、中には「有望」とされているものもある。

 現在、最も進んでいるのは、英オックスフォード大学(University of Oxford)が英製薬大手アストラゼネカ(AstraZeneca)と共同で主導する欧州の開発計画だ。

 中国でも、軍事医学研究院(Academy of Military Medical Sciences)とバイオ企業の康希諾生物(CanSino Biologics)が参加するワクチン開発計画が順調に進行している。

 WHOは臨床試験がすでに進行中のワクチンの他に、まだ開発の前臨床段階にある128のワクチン候補をリストアップしている。

 WHOとは別に、英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine)も、現在進行中の全てのワクチン開発計画のカタログ化に取り組んでいる。ここでは190以上のワクチン候補がリストされており、うち17が臨床試験段階に進んでいるとされている。

・いつ入手可能になるか

 欧州医薬品庁(EMA)は5月中旬、新型コロナウイルスのワクチンについて「楽観的なシナリオ」では1年以内に準備が整う可能性があるとの見方を示した。

 米政府が進めるワクチン開発計画「ワープスピード作戦(OWS)」は、米国の人口にほぼ匹敵する3億2000万回分のワクチンを2021年1月までに調達することを目指している。

 中国では、大手国有企業の中国医薬集団総公司(Sinopharm)が現在、2種類のワクチン候補の開発を進めており、2020年末から2021年初めにかけて市場に投入される可能性がある。

 欧州でも、2020年末までに有効なワクチンの提供を目標とする複数の開発計画が進行中だが、生産と発売にはそこからさらに数週間から数か月を要することが考えられるという。(c)AFP/Olivier THIBAULT / Paul RICARD