【6月26日 AFP】数多くの薬剤の試験が実施され、ワクチン候補は100を超える──。現在も多くの臨床試験が続く中、この記事では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬や予防法に向けた主要な研究開発の概要を報告する。

■治療薬:失敗を重ねた末の希望

・デキサメタゾン:死亡率を低減

 安価で広く入手可能なステロイド薬のデキサメタゾンは通常、アレルギー反応や関節リウマチ、ぜんそくなどの治療に用いられる。

 COVID-19の治療薬を研究しているチームは今月、デキサメタゾンの投与で症状の極めて重い患者の死亡数が通常の治療に比べて約3分の1減少したと発表した。

 だが、特効薬というわけではない。研究者らはデキサメタゾンが人工呼吸器を装着した患者の8人に1人の命を救う可能性があると考えている一方、それほど重症でない患者には臨床的有益性がほとんどないことが明らかになっている。

・レムデシビル:恩恵はわずか

 抗ウイルス薬のレムデシビルがCOVID-19患者の入院期間を短縮させる可能性があることが、米国で実施された少なくとも2件の大規模研究で明らかになっている。

 5月に米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」で発表された研究によると、本来はエボラ出血熱の治療薬として開発されたレムデシビルではあるが、患者の回復をプラセボ(偽薬)投与時よりも早めることができたという。

 これらの研究結果は注目に値するものの、薬剤の効果は驚異的というわけではないようだ。平均すると、レムデシビルによって患者の入院期間が15日から11日に短縮した。

 しかし、英医学誌ランセット(The Lancet)に発表された1件の研究は、レムデシビルを用いた新型コロナウイルス患者の治療では、「はっきりとした臨床的有益性」が確認できなかったと記している。

・ヒドロキシクロロキン:結果はまちまち

 数十年前に開発された抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンは、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が奇跡のCOVID-19予防薬として大いに称賛したが、実際に治療薬として作用することの科学的な証拠はほとんどない。

 英国の研究グループ「リカバリー(RECOVERY)」は今月、ヒドロキシクロロキンがCOVID-19患者の助けにはならないとの結論を下した。

 また、ヒドロキシクロロキンが効果を示さないばかりか、死亡リスクを高めると主張する研究論文がランセット誌に掲載された。この結果を受けて複数の臨床試験が一時的に中断されたが、データに関する問題が原因で論文は撤回された。

 一方、世界保健機関(WHO)は、ヒドロキシクロロキンに予防措置としてある程度の価値があることが現在進行中の臨床試験で示される可能性があるとの認識を示している。

・その他の治療薬

 このほかにも、別の目的で開発された複数の薬剤が新型コロナウイルス感染症の治療薬として有用かを調べるための試験が行われている。ランセット誌によると、これまでに数十の薬品治療に関する臨床試験が1000件以上実施されているという。

 中でも最も有望視されているのが、抗レトロウイルス薬のロピナビルとリトナビル、抗精神病薬のクロルプロマジン、免疫抑制薬のトシリズマブなどだ。

 回復した患者から採取した血漿(けっしょう)に関する臨床試験でも、ある程度の可能性が示されている。