【7月7日 AFP】レバノンは、ここ数十年で最悪の経済危機に直面している。失業者が急増する中、経済的に困窮したためレバノンから脱出し、南部国境からイスラエルに入国しようとするスーダン人が増えている。

 5月上旬以降、約16人のスーダン人男性がイスラエルとの国境を夜の闇に紛れて越えようとし、逮捕されている。先月末にはイスラエル側の排水管の中で縮こまっている男性が発見された。男性はイスラエル軍によって尋問され、レバノンに送り返された。

 イスラエルは2006年に交戦したレバノンのイスラム教シーア派(Shiite)組織ヒズボラ(Hezbollah)を警戒し、国境に厳重な警備体制を敷いているが、イスラエルもヒズボラも国境を越えようとするスーダン人は経済移民だと指摘している。

 レバノンの治安当局者はAFPに対し、「初期調査によると、イスラエルへの侵入は安全保障やスパイ活動が動機ではなく、レバノンの経済危機にのみ関係している」と語った。

 人口の45%以上が既に貧困線に満たない状態で暮らしているレバノンでは、6月初めに通貨が過去最低水準に急落、食料価格が急騰した。

 スーダン人らは在ベイルート大使館に、自分たちを祖国に連れ帰ってほしいとスーダン政府に訴えている。

「ここでの生活は高くつくようになった。スーダンに戻りたい。給料なんて何の価値もなくなった。食べることができない」と27歳の男性は語った。スーパーマーケットで働くこの男性の月給は50万レバノン・ポンドだったが、通貨が急落したため米ドルに換算すると333ドル(約3万5000円)から100ドル(約1万円)に落ち込んでしまった。

 レバノン・スーダン青年協会のアブダラ・マレク(Abdallah Malek)氏によると、レバノンには少なくとも4000人のスーダン人が住んでいるが、1000人以上が帰国を希望し、大使館に登録しているという。