【6月26日 Xinhua News】中国四川省(Sichuan)都江堰市(Dujiangyan)にある著名な古代の水利施設「都江堰」から南にほど遠くない場所に、「奎光塔(けいこうとう)」と書かれた扁額の掛かる古塔がそびえている。都江堰と市内の景勝地、青城山との往来に欠かせない街道の脇にあり、全国重点文物保護単位(国宝・重要文化財に相当)に指定されている。

 創建は明代だが洪水で破壊され、清の道光11(1831)年に灌県(現在の都江堰市)の知県(県の長官)周因培(Zhou Yinpei)が再建した。中国で層数が最も多い塼塔(せんとう、れんが造りの塔)として知られている。高さは52・67メートルで、重さは約3460トン。六角形の平面を持つ17層密檐(みつえん)式の塔で、10層目までは筒が入れ子状になった「双筒式」と呼ばれる構造になっていてらせん階段で上ることができる。上層部の7層は中空になっている。基礎部分は四角形で、石材が使われている。塔身1層目の外接円の直径は9・5メートル。灰色のれんがを「もち米石灰モルタル」で積み上げている。17層全ての軒先の六つの角には、鉄製の「塔鈴」がつり下げられ、風が吹くと清らかで穏やかな音色を響かせる。

 塔の再建時に記された「重建灌県奎光塔記」は明代の創建時の様子について、当時の灌県の東南部一体は平坦で肥よくな土地だったが、県城の城壁の南側の地勢が低くくぼんでいたため、地形の欠点を補う目的で塔を建てたとしている。地勢の改良による文化の振興を願い「奎光塔」と名付けたという。

 再建から100年余りを経た塔は、地震や風雨などの影響で塔全体の荷重の偏りが生じた。偏りがさらに進むと1層目のれんがの一部が圧壊し、塔身が湾曲して大きく傾いた。最もひどい時には塔の最上部が中心軸から1・4メートル近くずれ、倒壊の危険にさらされた。イタリアのピサの斜塔に対し「東方の斜塔」の典型的な代表とされた。

 1999年から2002年にかけて都江堰市文物局が塔の補強と傾き矯正の工事を実施したが、2008年5月12日にマグニチュード(M)8・0級の四川大地震が起こると、塔の5層目以上に塔身を貫通するひびが入り、いつ倒壊してもおかしくない危険な状態になった。地元では、同省文物局と北京清華城市規劃設計研究院文化遺産保護所、中鉄西北科学研究院の支持と支援の下で塔の補強・補修事業が開始され、翌年に完成した。修復を終えた塔は2013年、第7次全国重点文物保護単位リストに登録された。(c)Xinhua News/AFPBB News