【6月24日 People’s Daily】5月10日の午前、中国雲南省(Yunnan)会沢県(Huize)の大橋郷(Daqiao)では青空の下、冬植えエン麦が収穫の時を待っていた。

 北京から技術指導に当たっている徐麗君(Xu Lijun)博士は2017年11月から今日まで、会沢県に20回近く足を運んでいる。

「産業を興すというのは非常に難しいもので、発展の道のりは紆余(うよ)曲折を経なくてはなりません」と博士は語った。「庶民らに実際の成果を見せることが、新しいものを受け入れてもらう早道です」

 会沢県は山が多く、土地は痩せ、寒冷な高地であり、中国の中でも貧困が深刻な地域である。地元住民の貧困からの脱出を助けるため、中国工程院戦略相談センターの王波(Wang Bo)所長は会沢県の副県庁を担当した。王波氏が目をつけたのがエン麦だった。

 会沢県にはエン麦栽培の伝統があったものの、品種の老化や技術の遅れなどが原因でエン麦の生産量が非常に低かった。偶然にも、王波氏の妻である徐麗君氏はエン麦の研究家だった。彼女の指導教官の孫後忠(Sun Houzhong)博士はエン麦に詳しかった。徐麗君博士は師に協力を請い、王波氏と共にエン麦振興の道を進み始めた。この構想は、中国農業科学院の強力なバックアップを得た。

 2017年11月、徐麗君は初めて会沢県に来た。夫妻は北方の新品種のエン麦を20種余り導入した。2018年には大橋郷などの狭い範囲で試験栽培が行われた。会沢県では冬の休耕田が多いが、ここの冬の気候が比較的エン麦に適していることを考慮し、彼らは冬植えエン麦を広めると決めた。

 農民たちの疑念を払うべく、毎年冬と春に徐麗君博士は会沢を訪れた。この年、雲南が10年に1度の干ばつに遭い、作物の生育期に当たる5か月間に全く雨が降らなかった。エン麦を含め、農作物は大規模な減産となり、全く収穫できないものも出た。

 幸運なことに、徐麗君博士の持ち込んだエン麦は干ばつの対策検証済みであり、試験栽培は成功した。中でも二つの品種は1ムー(約667平方メートル)あたりの生産が300キロを超えた。

 地元の農民たちに冬植えエン麦を希望する人が続出した。地元政府のバックアップの下、徐麗君博士は訓練チームを立ち上げ、農民たちにエン麦栽培の新技術と新産物を教えた。大橋郷の八つの村の農家で「エン麦-ジャガイモ」の新しい栽培モデルが試され、2019年には1戸あたりの平均収入が9000元(約10万円)増加した。

 新型コロナウイルスの防疫期間にも、徐麗君博士と会沢県エン麦推進部門、栽培を行う農家は頻繁に連絡を取り合い、即時的に農民が直面する問題を解決していった。彼女が語ったところによれば、エン麦の市場価格・麦わらの市場価格・コストを計算すれば、夏に栽培するジャガイモの収入と合わせて、1ムーの耕作地があれば1人が貧困から脱出できるという。 (c)People's Daily/AFPBB News