【6月24日 AFP】中国の首都北京にある犬の保護施設で、ボランティアらが犬数十頭に餌をやっている。ここにいるのは今週同国南部で開催され、物議を醸す犬肉祭りで供されるはずだったところを救出された犬たちだ。

 玉林(Yulin)で毎年開催されるこの祭りはいつも、動物保護活動家らの激しい怒りを招いている。だが今年は新型コロナウイルスの流行により、残酷とみなしている伝統に終止符が打たれるのではないかと活動家らは願っている。

 動物保護団体「ノー・ドッグ・レフト・ビハインド(No Dogs Left Behind)」の創設者ジェフリー・ベリ(Jeffrey Beri)氏はこの祭りについて、「非人道的で野蛮だ」と主張。同団体は北京郊外にある、柵で仕切られた広い囲いの中で約200頭の犬を飼育し、新たな飼い主を探す活動を行っている。

 活動家らは犬の食肉処理場に乗り込んだり、トラックを妨害したりして、毎年数百頭の犬を救出している。活動家らによると、業者はペットや野良の犬をさらい、犬たちを長距離輸送する。ほとんどの場合、行き先は中国南部だという。

 中国の一部地域では伝統的に、犬肉食が健康に良いと信じられているが、富裕な都市部で暮らす人々が犬をペットとして飼うようになるにつれ、犬肉食は着実に廃れつつある。

 また新型コロナウイルス感染症がさまざまな動物を食用として販売していた武漢(Wuhan)の市場に関連していたとされたことから、犬肉の需要がさらに落ち込んだとみられている。

 衛生についての懸念が高まる中、中国は野生動物の消費と取引を禁止する法律を速やかに制定。犬肉はこの法律の適用外となっているが、玉林にほど近い深セン(Shenzhen)と珠海(Zhuhai)は4月、中国の都市では初めて犬肉食を禁止した。

 また先月には同国の農業農村省が、犬の分類を家畜ではなく愛玩動物に改めた。だが犬肉食を明確には禁止していない。

 AFPが確認した玉林での今年の犬肉祭を捉えた映像には、小さく不潔なおりの中に数十頭の犬が押し込まれている様子や、複数の大きな露店で精肉店が犬の死骸を高く積み重ねる様子が捉えられていた。

 21日から1週間の日程で開催される祭りに携わる飲食店従業員らはAFPの取材に対し、祭りの名前が「玉林夏至祭り(Yulin Summer Solstice Festival)」に改称されたと説明。また客足が鈍ったと話している。

 犬肉を扱う飲食店で働くある男性は「来場者の数が大幅に減った」というものの、勤務先の店は通常通り営業していると語り、警察も政府も犬がペットに分類されたからといって、犬肉の販売をやめるよう命令することはなかったという。

 動物保護団体「ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル(Humane Society International)」のピーター・リ(Peter Li)さんは「(新規則が)中国の他の場所では影響を与え、人々がそれを議論しているように思う。だが玉林市内の犬肉取引には直ちに影響を及ぼさなかった」と話した。

 動物愛護活動家による取り組みや衛生面での懸念にもかかわらず、地元政府の暗黙の了解の下、犬肉祭りは存続している。

 映像前半は玉林で撮影された動画、「ノー・ドッグ・レフト・ビハインド」が22日撮影・提供。後半は北京にある犬の保護施設、22日撮影。(c)AFP/Laurie CHEN