【6月23日 AFP】会場の照明が暗くなり、幕が上がり、演奏が始まる──スペイン・バルセロナ(Barcelona)中心部にあるリセウ大劇場(Gran Teatre del Liceu)で通常通り公演が再開したことを示すのは、あとは客席だけ。この日、オペラハウスの座席を埋め尽くしていたのは、約2300本の植物だ。

 リセウ大劇場は数か月間にわたり営業を停止していたが、ユニークな形で再開日を迎えた。舞台に音楽が響くのは3月中旬以来。弦楽四重奏団がジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini)の「菊(Crisantemi)」の美しく軽快なメロディーを奏で、1階席、2階の特等席、升席の赤色の座席には2292本の植物が並んだ。青々とした緑が客席の柱や建材にあしらわれた華やかな金色と対照的だ。

 植物が座席に着くことは、ロックダウン(都市封鎖)下で自然が人々から居場所を取り戻したことのメタファーだという。

 コンサートの発案者は、コンセプチュアル・アーティストのエウヘニオ・アンプディア(Eugenio Ampudia)氏。ロックダウン下で都市の喧騒(けんそう)が静まって鳥のさえずりがよく聞こえるようになり、家の周りの植物がぐんぐんと成長したことから考えついた。コンサートによって、持続可能性や、自然との関係について考えてもらうことが狙いだという。

 アンプディア氏は報道陣に対し、「雑草が広がるようにリセウ大劇場を緑で占拠し、自然のあふれる場所にして、人がいないときでも生き生きとした所に変えてはどうだろうと思った」と語った。

 コンサートはリセウ大劇場のウェブサイトで生配信され、視聴者は自宅でも植物に音楽を聴かせることができた。

 公演終了後、植物は全て、この数か月間、新型ウイルスと最前線で闘っている医療従事者らに寄付された。

 映像は22日撮影。(c)AFP