【7月3日 AFP】世界最高の性能を誇る南米チリの巨大電波望遠鏡「アルマ(ALMA)」の運用が、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の影響で3月から止まっている。超新星などの天体現象を見逃す恐れがあり、あたかも地球が目を閉じてしまったようだと科学者らは指摘する。

 チリ北部のアタカマ砂漠(Atacama Desert)にアンテナ66基を並べ、一つの巨大な望遠鏡として連携させたアルマ天文台は、主幹科学者のジョン・カーペンター(John Carpenter)氏によると3月18日から運用を停止している。約400キロ離れたパラナル天文台(Paranal Observatory)と超大型望遠鏡VLTも、同様に閉鎖中だ。

 これは、短時間しか観測できない不定期なガンマ線バースト(GRBs)や超新星といった天体現象を観測する機会が、永遠に失われる恐れがあるということを意味する。

 特にこの春先は、オリオン(Orion)座の肩の位置にある赤色巨星ベテルギウス(Betelgeuse)の急激な減光が観測され、超新星爆発の可能性が指摘されていた。「ちょうど(ベテルギウスの)キャンペーン観測を始めた直後に、天文台を閉めなければならなかった。観測は続けられなかった」とカーペンター氏はAFPに語った。

 チリは現在、新型コロナ感染の中心地の一つとなっている。国内の感染者数は26万人を超え、確認された死者数は約5000人だが、この他に7000人が新型コロナで死亡した疑いがあるとみられている。

 パラナル天文台を運用する欧州南天天文台(ESO)のイツィア・デグレゴリオ(Itziar de Gregorio)氏は、「観測所の管理のため少数の職員が残っているが、観測は一切行われていない」と述べた。

 カーペンター氏は、こうした状況について「(観測活動に)著しい遅延が発生するだろう。アルマ天文台では年間およそ4000時間に及ぶ観測を行っている。もし天文台の閉鎖が6か月間続けば、2000時間分の観測が失われることになる」と話した。(c)AFP/Paulina ABRAMOVICH