■「なぜ最近になって浮気が増えているのか…」

 テクノロジーの発展によって可能になった気軽な関係に、多くの人がはけ口を求めているとジュー氏は見ている。特にウィーチャットの「People Near Me(近くにいる人を探す)」という機能は、浮気相手探しに使われることが多いのだという。

 中国政府の統計では、1998年から2018年までに婚姻件数は14%近く増え、今や年間1000万組を超えていると報告された。だがそれと同時に離婚率も約4倍となり、その件数は年間450万件に上る。

 浮気調査を行っている上海の私立探偵ダイ・ペンギュン(Dai Pengjun)氏によると、問題となるケースでは大抵メッセージアプリが関わっているという。

 近年、ダイ氏の仕事はとても忙しくなり、今では7人のスタッフを雇って中国全土から月10件ほどの調査を請け負うようになった。依頼される案件の40%は、女性の浮気に関する調査だという。

「なぜ最近になって浮気が増えているのか…それをずっと考えている」と話すダイ氏。

 そして、「倫理観の低下が理由だろうか? 私はそう思わない。暮らしの中の物質的な変化とテクノロジーの発展によるところが大きいと思う」と続けた。

 調査では「対象者」の張り込み、尾行、隠し撮りなどをするという。AFPの取材班は、ある男性を尾行するというダイ氏と彼のチームに同行した。真昼の情事を疑う妻からの依頼だった。チームは上海の金融街と地下鉄を数時間にわたって尾行したが、証拠となるような行動は確認できなかった。

 ダイ氏によると、妻以外の女性と長期的に浮気を続けている男性は何人もいるとされ、また相手が一人にとどまらないケースや、浮気相手との間に子どもが生まれているケースもあるという。

 こうした状況に結婚カウンセラーのジュー氏は、教育の欠如も問題の一つと話す。「わが国の性教育は小学校から始まるが、愛や結婚に関する教育は皆無だ」

 一部中国メディアでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で施行された外出自粛により夫婦は互いにうんざりしてしまい、今後は離婚が増えると予想されている。

 だが、エコーさんの場合は逆だ。上海市の外出自粛によって夫と過ごす時間が増え、その時間を夫婦関係の修復に充てることができ、今は希望もあるという。

「時々、他の女性たちに感謝の気持ちを持つことすらある」 (c)AFP/Dan Martin / Jessica YANG