【6月22日 AFP】11月の米大統領選挙での郵便投票について、ウィリアム・バー(William Barr)米司法長官は21日、「不正行為が続出する恐れがある」と激しく非難した。ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が繰り返している主張に同調した形だが、過去に郵便投票をめぐって重大な問題が起きたという証拠は提示されていない。

 バー氏はFoxニュース(Fox News)のインタビューで、「国内の分断が激化している」今、郵便投票は選挙結果に対する国民の信頼を損ねると主張。投票用紙が郵便受けから盗まれたり、外国勢力が「大量の偽造票」を印刷して投票を左右したりするかもしれないと指摘した。

 だが、選挙に詳しい専門家らはこうした主張に懐疑的だ。

 米国では既に多くの州や自治体が何年も前から郵便投票を導入しており、単発的なトラブルを除けば問題が発生したことはない。また、郵便投票を行ってきた海外在住の米国人や米軍人らからも、不正に関する深刻な苦情は出ていない。

 実はトランプ氏自身も2018年、有権者登録をニューヨーク州からフロリダ州に変更した後の中間選挙で郵便投票を行っている。

 今回の大統領選では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下で予備選が行われており、投票所に長い行列ができる結果となっている。郵便投票が政治に及ぼす影響の全容は、まだはっきりしていない。

 トランプ氏は先月、「郵便投票は大規模な不正と乱用をもたらす。われらが偉大なる共和党の終わりにもつながる」との主張を全て大文字でツイッター(Twitter)に投稿した。この主張を擁護するバー氏の発言には、司法長官の従来の役目を逸脱しているとの批判が噴出している。まるで大統領の顧問弁護士だと指摘する民主党議員もいる。

 民主党寄りの評論家からは、トランプ氏が民主党候補のジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領に敗北した場合に法廷闘争に持ち込む土台づくりだとの見方も出ている。(c)AFP/Brian KNOWLTON