【6月26日 CNS】「人の演技はすべて『真実』を追求しますが、私の演技はいかに『偽物』になるかを追求しています。人間か彫刻か、観光客が私を見て区別できなければ大成功です」。そう話すのは、中国・西安市(Xi'an)のパフォーマンス芸術家の馬龍(Ma Long)さん。全身を青銅色に染め、彫刻のように微動だにしない路上パフォーマンスが注目を集めている。

 新型コロナウイルスの流行状況が改善し、28歳の馬龍さんが再び西安市の観光スポット「大唐不夜城」でパフォーマンスを披露できるようになった。

 軍服調の服装に厚手のマフラー、肩掛けかばんの姿で古いタイプの自転車に乗り、熱心に働く1960~70年代の勤労青年をイメージ。その姿で10分以上動かず、まばたきもしない。馬さんは「パフォーマンスを通じて、より良い人生を求めて奮闘する精神を伝えたい」と話す。

 馬さんは毎日昼すぎから数時間をかけてパフォーマンスの準備をする。顔や首に油絵の具を塗り、ペンキで塗装した服を身につけ、青銅色の彫刻の質感を表現する。1回につき15分で、毎晩3~4回パフォーマンスを行う。近づいた観光客は、瞬きもしない馬さんを見て、彫刻なのか人間か不思議そうな表情を浮かべる。そんな時、馬さんが無表情なまま子どもたちにキャンディーをプレゼントすると、観光客が一斉に驚いたり笑い声を上げたりする。この瞬間が、馬さんにとってはパフォーマンスを続ける理由だ。

 最近は、上昇し続ける気温がパフォーマンスの難敵だ。ぶ厚い服装と顔の油絵は、汗をかいても隠す役割を果たす。パフォーマンス中に蚊に刺されたり、写真撮影のフラッシュで目が刺激を受けたりすることも、「彫刻」の馬さんを苦しめる。それでも「観光客に自分のベストの演技を見てほしい」と、動じることはない。

 観光地の人出は増えており、馬さんは「自分のパフォーマンスを通じて、国内外の観光客に西安の魅力を感じてもらいたい」と話している。(c)CNS/JCM/AFPBB News