【6月21日 Xinhua News】中国黒竜江省(Heilongjiang)牡丹江市(Mudanjiang)にある「中国満繍(しゅう)博物館」には、少数民族満族の伝統的な刺しゅう技法「渤海靺鞨繍」を用いた作品が数百点展示されている。中でも「藍眼晴(青い目)」と題された作品は、油絵と見間違うほどの立体感が際立っている。

 作品の作者で同館館長の孫艶玲(Sun Yanling)さんは、2014年に国家級無形文化遺産の代表的項目リストに登録された「満族刺しゅう」の継承者で、6才から祖母の手ほどきで技法を学び始めた。渤海靺鞨繍は「刺しゅうの中の油絵」と呼ばれ、千年以上の歴史を持つ。

 孫さんは08年、作品を携えてハルビン国際経済貿易商談会に参加。10年の上海国際博覧会と15年のミラノ国際博覧会に相次いで出展し、活躍の場を国際舞台へと広げていった。国家級無形文化遺産の継承者として、国内のさまざまな刺しゅう技法の優れた点を積極的に取り入れ、技術の向上を図ることで、芸術的な表現力を高めている。

 孫さんは毎年、民政局や婦女連合会、障害者連合会などの組織を通じて、求職中の女性や体の不自由な人を集めて無償で刺しゅうを教え、技術の継承と普及を図るとともに、こうした人々の収入増にも貢献している。動画配信などのオンラインでも刺しゅうを教える取り組みを弟子たちと共に進めており、フォロワー数は6万6千人に上る。

 伝統技術の良さをより多くの人に知ってもらおうと、孫さんは牡丹江市と鏡泊湖景区の2カ所に博物館を設立。18年には広東省(Guangdong)深圳市(Shenzhen)に中国満繍博物館と満族刺繍研究所をオープンした。デザインチームと営業チームを立ち上げて刺しゅうバッグやストール、ブローチなどの商品を開発し、ロシアや日本、米国など30カ国・地域で展示会への出展や販売を行っている。

 孫さんはこれまでに渤海靺鞨繍の技法を2万人以上に教え、1372人からなるお針子チームも結成した。メンバー1人当たりの月収は3千元(1元=約15円)を超えるという。(c)Xinhua News/AFPBB News