【6月19日 AFP】オランダの美術館で展示されていた巨匠ビンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)の絵画が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う展覧会休止中に盗難に遭った事件で、「美術界のインディ・ジョーンズ(Indiana Jones)」の異名をとる美術調査員が18日、盗まれた絵画を撮影した最近の写真2枚を入手したことを明らかにした。

 この絵画は1884年作「Parsonage Garden at Neunen in Spring(春のヌエネンの牧師館の庭)」で、価値は最高で推定600万ユーロ(約7億円)。アムステルダム近郊のシンガーラーレン美術館(Singer Laren Museum)が展覧会のため借り受けていたが、3月30日に盗難に遭った。警察の公開した防犯カメラ映像には、犯人が夜中にガラス戸を割って美術館に侵入し、作品を小脇に抱えて逃走する様子が映っていた。

 数々の盗難美術品を取り戻した実績を持つオランダ人の美術調査員アルテュール・ブラント(Arthur Brand)氏は、数日前にある人物から写真2枚を入手したと述べている。入手経路の詳細は明かしていない。

 写真は、黒いプラスチックシートの上に盗難絵画が置かれたもので、撮影日とされる5月30日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)が一緒に写っている。写真を撮影した日だという。

 ブラント氏は、3か月にわたる徹底調査の末に写真を入手したと説明。価値のある盗難絵画は売却が不可能な場合、窃盗犯に破壊されることが多いと指摘した上で、盗まれたゴッホ作品が「現存するという初めての証拠」だと述べた。

 入手した2枚の写真は「マフィアの間で共有されていた」という。

 写真の中の作品には、下方に新たな引っかき傷が確認できる。ブラント氏は盗難時についたとの見方を示した。

 また、一緒に写ったニューヨーク・タイムズ紙には、2002年にゴッホ美術館(Van Gogh Museum)から作品2点を盗んだオランダ人窃盗犯オクターブ・ダーラム(Octave Durham)にブラント氏が行ったインタビューが掲載されていた。写真には、ダーラムの著書「Master Thief(大泥棒)」も写っていた。

 出回った写真についてブラント氏は、「裏社会で買い手を見つけようとしている可能性がある」と指摘する一方、「著書を一緒に写すことでダーラムに疑惑をかけようとしたのかもしれない」と述べた。ただ、問題の作品の盗難時、ダーラムはアムステルダムの病院に入院中で「強固なアリバイ」があるという。(c)AFP/Jan HENNOP