【6月18日 AFP】ハンガリー議会は16日、オルバン・ビクトル(Viktor Orban)首相による権力掌握の画策だと国際的に批判されていた新型コロナウイルス対策の非常事態法の撤廃を可決した。ただ、同時に政府が「医療上の緊急事態」を宣言できる別の法案も可決され、野党や人権団体は警戒の声を上げている。

 非常事態法は、新型コロナ対策として首相の権限拡大や非常事態宣言の無期限延長を可能とする内容で、欧州連合(EU)をはじめ国内外から「独裁的」だと批判されていた。

 オルバン氏率いる与党フィデス・ハンガリー市民連盟(Fidesz)が過半数を占める議会は、賛成192票、反対0票で、非常事態宣言の解除と新型コロナ危機対応の特別法の撤廃を政府に求める法案を可決。政府は週内にも非常事態宣言を正式に解除するとみられている。

 だが、議会が同時に可決した別の法案をめぐって、政府が今後「医療上の緊急事態」を宣言すれば、政令によって無期限に権力を行使できるようになる恐れがあると批判の声が上がっている。

 オルバン政権に批判的な主要非政府組織(NGO)は、非常事態法の撤廃は「まやかし」にすぎず、政府の権限が強化された状態は変わらないと共同声明で警告した。

 オルバン氏は2010年の首相就任以来、権力の一極集中化を推し進め、司法制度や教育制度、メディアなど各種業界を一変させてきた。野党や国内外の人権団体は、オルバン氏がウイルスとの闘いよりも自身の支配をより強固なものにするため非常事態法を乱用したと主張。オルバン氏への権力集中により、独立機関の解体が加速すると懸念している。

 非常事態法が導入された4月以降、ハンガリーでは100件を超える政令が出され、野党が主導する複数の自治体から権限と財源が剥奪されている。(c)AFP/Peter MURPHY