【6月30日 AFP】カナダ・モントリオールを拠点に活動するエンターテインメント集団「シルク・ドゥ・ソレイユ(Cirque du Soleil)」は29日、破産手続きを申請し、3000人余りを解雇すると発表した。

 シルク・ドゥ・ソレイユは1984年、ギー・ラリベルテ(Guy Laliberte)氏(60)によって創設された。同氏の下、世界300以上の都市で巨大テント興行を行う国際的なエンターテインメント集団に成長した。通常のサーカスで目玉とされるライオンやゾウ、クマといった動物を使用せず、音楽に合わせた魅惑的で現代的なサーカスの演目で観客を喜ばせた。

 その後、ラリベルテ氏は2015年に10億ドル(約1080億円)でシルク・ドゥ・ソレイユを手放した。ケベック(Quebec)の現地紙によると、それ以降のシルク・ドゥ・ソレイユは高額な常設公演会場の買収や改修に着手したが、独創的な精神は薄れてしまった。そして負債は10億ドル以上に膨れ上がった。

 さらに今年3月、新型コロナウイルスの流行によって米ラスベガス(Las Vegas)やイスラエル・テルアビブ、ロシア・モスクワ、豪メルボルンなど世界44か所の公演の中止を余儀なくされ、曲芸師や技術者ら大勢のスタッフの一時解雇に追い込まれた。

 破産への道に突き進む中、シルク・ドゥ・ソレイユは5月初めに売却の可能性を含めた選択肢の検討を銀行に委託した。一方、株主らは短期的なつなぎ資金として5000万ドル(約54億円)を決済した。

 シルク・ドゥ・ソレイユが「外国の私企業」に売却される懸念を抱いたケベック州政府は、新型ウイルス流行による大規模イベントの開催制限が世界的に緩和されつつある中、公演再開を支援する2億ドル(約220億円)の条件付き融資を申し出ていた。

 カナダ・コンコルディア大学(Concordia University)経営学部でコーポレート・ガバナンス(企業統治)部門を率いるミシェル・マグナン(Michel Magnan)氏は、「多数の公演で大人数が働いている。彼らは今どこにいるのか、何をしているのか、どう過ごしているのか。心身の状態はどうなのか」「時間がたてばたつほど、専門的な技能は失われてしまう恐れがある…こうした資産は形がなくなってしまうのだ」と懸念を示していた。(c)AFP/Jacques LEMIEUX