■「冷たい砂漠」

 2017年までこの地域でインド軍大隊の司令官を務めたS・ディニー(S. Dinny)大佐は、この場所で兵士は標高5200メートルまで登らねばならず、 「見かけに反して極めて危険」な地形だと指摘する。

 ディニー大佐はAFPに対し、「ここは冷たい砂漠だ」 「肉体と精神に大きな負担となる。酸素濃度はデリー(Delhi)やムンバイといった都市の60%にすぎない」と語った。

 さらに、「地図上で境界が示されておらず、境界を示す物もない。互いの地図が交換されたこともないため、(国境線に関して)相手国が主張している内容も分からない」(ディニー大佐)という。

 しかし、インド軍の北部司令部を率いていたDS・フーダ(DS Hooda)退役中将は、誤解を避けるため両国は火器の使用禁止をはじめとする詳細な手順を定めており、通常は事態がエスカレートすることはなく、おおむね平穏な状態が保たれていたと説明する。

 フーダ退役中将は、「パトロール部隊同士のにらみ合いになれば、互いに一定の距離をとって旗を掲げる。インド側の旗は、こちらの領内に入っているので戻れ、という意味で、中国側の旗も同様の意味だ」とAFPに語った。

 さらに、「われわれの時代には、手順と交戦規則を何度も見直していたので、いさかいが起きたとしても、もっと軍隊らしいやり方で解決することができた──街のならず者のように戦って決着をつけるのではなく」と述べ、今回はこの手順が完全に壊されてしまったと語った。(c)AFP/Aishwarya Kumar with Parvaiz Buhkari in Srinagar