【6月17日 Xinhua News】中国人の大半がまだ「ペット探偵」という言葉すら聞いたことがなかった2012年、39歳の孫錦栄(Sun Jinrong)さんはパイオニアとなった。ペット探偵は事件を解決するのではなく、わずかな手がかりを通じて飼い主のために行方不明になったペットを探し出すのが仕事。孫さんはこの8年間で、千件以上のペット回収に成功している。

 かつて上海に出て懸命に頑張っていた孫さんは、ペットの保護・愛護活動を行う公益団体で働きながら、収入の一部を野良猫や野良犬の保護活動に寄付していた。その後2013年にペット捜索ビジネスを立ち上げた。

 孫さんは「数十年前はまだ、犬や猫は中国の家庭にとって役割を持った家畜で、家の見張りや蓄えた穀物を守るネズミ捕りに使われていた。その後次第にペットの居場所は屋外から室内へと変わり、家族の一員になった」と述べ、人々がペットを重視するようになってきたことで、ペット探偵という商売が生まれたと説明した。

 孫さんとチームのメンバーは毎回、暗視装置や強光懐中電灯、埋設管探知機など、ずっしりと重い専門機材を背負って出発する。迷子になった猫は通常、夜中にならないと姿を現さない上、思いもよらない片隅に隠れていることもある。真夜中に小区(居住区)の中をぐるぐる回ることや、十数階の階段を何往復もすることは日常茶飯事だ。

 成功率を上げるため、孫さんは数万元(1元=約15円)相当の機材を購入し、海外のアニマルコミュニケーターからペットとの意思疎通方法を学んだ。鳥の鳴き声を真似して猫の注意を引くなどの工夫の他、張り込み中にせき込んで動物を驚かせることがないよう禁煙もしたという。

「2019年中国ペット業界白書」によると、同年の中国都市部のペット(犬と猫)に関する消費市場規模は2024億元に達し、ペット探偵やペット物流など多くの業種が急速な伸びを示している。

 しかし、毎月数十件から多い時には百件以上もの依頼を受ける孫さんは今、個人メディアや科学知識普及用の動画を通じて人々に科学的なペットの飼い方を広めるという、一見「自分の商売にとって損」になりそうなことを始めている。孫さんは「科学知識の普及を通じて、少しでも迷子になるペットが減少してほしい」と話している。(c)Xinhua News/AFPBB News