【6月17日 People’s Daily】初夏、中国東部江蘇省(Jiangsu)泗陽県(Siyang)の畑では、農家の薛家聡(Xue Jiacong)さんが桃の実に袋をかぶせていた。「去年は30万元(約450万円)稼ぎました。この桃はわが家の収入源なんです」

 泗陽県では、薛さんのように桃の栽培でもうけた農家が少なからずある。近年、泗陽県は「桃の郷」となりつつあり、桃産業は環境に配慮した発展の道を歩んでいる。全県で桃の木が植えられた面積は6万ムー(約40平方キロ)、去年の全国生産額は10億元(約150億円)となった。1万2000人以上が職に就き、農民の収入は1億元(約15億円)近く増えた。

 泗陽県の桃は人々に富をもたらしたが、生態系にとっても鍵となる存在である。

「私たちの桃は、500グラムで10元(約150円)より安くなったことがありません」と、桃の生産会社を営む華松青(Hua Songqing)さんは言う。「この点滴かんがいシステムをご覧ください、養豚場のバイオリキッドを希釈した後、チューブ伝いに桃の根っこへ直接与えます。有機肥料を与え、虫害を防いで農薬の散布を減らし、雑草もみな粉砕して土に混ぜ込み、肥料として利用します」

 泗陽県の耿暁雲(Geng Xiaoyun)副書記によれば、県の桃協会は果樹の間隔や剪定(せんてい)を工夫するなど新しい技術を取り入れ、江蘇省農業科学院の協力を得て、全県で20のモデル桃園や5のモデル植樹基地を建設し、環境に配慮した桃園が全体の90%を占めるという。

 環境に配慮した桃を消費者に認識してもらうべく、泗陽県の桃生産を行う合弁会社はすべて江蘇省農産物品質安全追跡プラットフォームに加入している。桃が市場に出回る際、消費者はQRコードを読み取れば生産情報を知ることができる。「QRコードを貼ると桃の売値が高くなるんです」と魏国(Wei Guo)副県長は語る。

 環境に配慮した生育で良い桃が採れる。泗陽県にある33の桃生産拠点はグリーン食品認証をパスし、「泗陽の桃」は農業農村部の地域指定農産物に認定され、全国および省での桃品評会で15の金賞と28の銀賞を相次いで獲得した。

 桃を売るだけでなく、桃園は景観をつくり出した。国際児童デーには、リゾート地区の桃公園では笑い声が響き、多くの家族連れが桃を観賞し、写真を撮った。農業と旅行が融合し、相次いで景観区がつくり出され、農業体験や釣り、果実狩りなどのプロジェクトやイベントなどで10万人以上の旅行客を引きつけ、観光収入は総合して1億元(約15億円)強になった。

 泗陽県では、風景を売りにするだけでなく、お茶の製造にも乗り出している。「間引きした花のつぼみや落ちた花はみんな捨てていましたが、今は桃花茶にしていて、500グラムで1000元(約1万5000円)にもなるんです」と、桃栽培の会社を営む章健正(Zhang Jianzheng)氏は言う。今年、この会社で製造した桃花茶の売り上げは3万元(45万円)になった。

 さまざまな工夫を凝らし、1次産業から3次産業を有機的に融合させることで、桃産業はますます盛り上がりを見せている。(c)People's Daily/AFPBB News