【6月16日 AFP】フランスでは長らく人種別統計を取ることが禁止されてきたが、警察内に人種差別が横行しているとの見方が広がる中、データ取得を認めるべきかどうかという議論が再燃している。人種別のデータを取ることで、国内における人種差別がより明確になるとの主張もある。

 仏政府報道官のシベット・ヌディアイ(Sibeth Ndiaye)氏は、国のデータベースに人種を含めることで政治家らは「現実をありのままに評価し、見ること」ができると提案し、怒りをあらわにした。

 セネガルで生まれ、フランスに養子縁組で来たヌディアイ氏は社会における無意識的な人種差別を批判。先週末、仏紙ルモンド(Le Monde)で「この国の公共の場、政治・経済・文化において有色人種であるのを代表すること」についてフランスは、正直に見つめるべきだと主張した。

 さらにヌディアイ氏は15日、ラジオ局フランス・アンテル(France Inter)で、人種データは「微妙な人種差別」と闘う上で一助になるとし、黒人やアラブ人、有色人種には機会が全くないと主張する人々と人種差別問題など存在しないと主張する人々とが分かり合える助けにもなるとも述べた。

 1978年の法律では、国勢調査またはその他の調査において人種、民族、政治的または宗教的見解に関するデータの収集を禁じている。つまりフランスは、北および西アフリカなど旧植民地からの移民を受け入れてきたが、人種構成に関する公式統計が存在しないことを意味している。

 フランスは第2次世界大戦(World War II)中、ドイツ占領下で発足したビシー政権がユダヤ人をナチス・ドイツ(Nazi)の強制収容所に送り込んだことから、人種問題はいまだ微妙な問題となっている。

 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領は15日、ほぼ全員白人である政権を分断させているこの問題について、「現時点では」再検討するつもりはないと述べた。

 ある大統領顧問はAFPに対し、マクロン氏は「迅速かつ目に見える結果を生み出しそうにない新たな議論よりも、差別と闘う具体的な取り組みを支援する」と説明した。

 マクロン氏は14日の演説で、警察内に人種差別が横行しているとの見方が広がり、これに対する抗議活動が展開されていることについて、人種差別には「妥協なく」闘うと誓った。さらに、「名前、住所、肌の色」が個人の人生における機会に影響を及ぼしている可能性があるという事実については対処しなければならないとも指摘した。

 同日、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch)は、フランスは警察による黒人およびアラブ系男性に対する「虐待的で差別的な」身元確認を止めるべきだと述べている。(c)AFP/Mariette Le Roux