【6月22日 AFP】新型コロナウイルスの流行が収束に向かうにつれ、しばらく前には想像もできなかった問題がフランスで生じている。マスクの過剰在庫だ。そのためフランス政府は消費者に国産マスクを買ってほしいと呼び掛けている。

 フランスでは新型ウイルスの流行ピーク時にはマスク需要が非常に高まり、多くの衣料品メーカーが生産ラインを再使用可能な布マスクの製造に切り替えた。ところが流行が収束してくると、メーカーの元には数千万枚のマスクが売れ残る事態となり、政府が「メード・イン・フランス」のマスクの販促に乗り出した。

 1枚3~5ユーロ(約360~600円)で20回ほど洗って使える布マスクは、新型ウイルスの感染拡大を抑える重要な防護具だ。流行の最中だった3月中旬以降、仏企業450社がマスクの生産を開始、あるいは強化し、生産ラインを切り替えるために新たな投資を行った企業もあった。

 しばらく前までは、薬局でマスクを買うことはほぼ不可能で、医療従事者などマスクを不可欠とする分野で勤務する人々でも手に入れることができず、政府に怒りが向けられていた。

 ところが新型ウイルスの流行が下り坂になってくると、マスクの需要も落ち、今やマスクはどの薬局の店頭にもあるばかりか過剰供給気味になっている。現在約4000万枚のマスクが売れ残っているとされ、悩む衣料品業界は余剰分の販売支援を求めているが、これまでは何の反応も得られなかった。

 だが先々週、仏経済・財務省は関係各方面を招いて対応策を協議し、再利用可能マスクの利点を「一般市民や大企業に周知していく」姿勢を示した。

 アニエス・パニエリュナシェ(Agnes Pannier-Runacher)経済・財務相付副大臣は仏RTLラジオで、マスクの余剰は政策の失敗の結果ではないと明言。また議会中継チャンネルLCPでも、新型ウイルス流行による2か月間の厳格なロックダウン(都市封鎖)で産業界が停止状態に陥った中、「マスク製造が数百の企業と大勢の雇用を救った」と述べた。

 しかし、市場では、環境への負荷は高いもののより安価な使い捨てマスクの人気が高く、「フランス製」マスクは敬遠される傾向がある。パニエリュナシェ氏は「多くの企業が従業員への支給用として、中国製の外科手術用マスクを選んでいる」と認めつつ、外科手術用マスクは「より実用的に見えるが、環境への負荷はより高く、経済性でも劣っている」と指摘した。

 仏経済・財務省はまた、新型ウイルス流行の第2波が訪れる可能性に備えて、強化されたマスク生産ラインを維持したい方針を示している。(c)AFP/Marie-Morgane LE MOEL