【6月15日 AFP】米ミネソタ州ダルース(Duluth)で1920年6月15日、黒人男性3人が、白人女性をレイプしたとして証拠もなくリンチ(私刑)を受けた。

 それから100年を経た今月12日、ミネソタ州当局は、繰り返し犯行を否定しながらも有罪判決を受けたもう一人の黒人男性に対し、有罪を取り消す決定を下した。

 1942年に亡くなったマックス・メイソン(Max Mason)さんがミネソタ州では初めて、死後に有罪を取り消されたことは、米国人が今も社会の各所に根付く人種差別と対峙(たいじ)する現在において、非常に象徴的な出来事と言える。

 有罪取り消しの要求は、同州ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)さんが手錠をはめられ、白人警官に首を膝で9分近く押さえつけられて死亡した先月25日よりもかなり前に申請されていた。

 ミネソタ州のキース・エリソン(Keith Ellison)司法長官はツイッター(Twitter)に、「果たされなかった正義が100年を経てなされた」と投稿。

「ミネソタ州ではこの数週間、より質の高い司法の必要性が明らかにされたが、マックス・メイソンさんへの有罪取り消しは、長らく先延ばしされてきたとはいえ、そこへと向かう一つのステップだ」と述べた。

 1920年6月14日、若い白人女性のアイリーン・タスケン(Irene Tusken)さんは、男友達と一緒にダルースのサーカスを見物。翌日、男友達は自身の父親に、サーカスの黒人団員らに襲われ、タスケンさんがレイプされたと話した。

 警察は、メイソンさんを含む黒人男性数人を拘束して取り調べを行ったものの、タスケンさんと男友達は襲撃者を一人も特定できなかった。

 また裁判所の記録によると、医師がタスケンさんを診察したものの、暴行の証拠は見つからなかったという。

 そうしてメイソンさんは釈放され、旅回りのサーカス団に戻りダルースを離れたが、警察は他の数人の男性らと共に再びメイソンさんを逮捕。

 するとその日の夜、怒った群衆が警察署に押し入り、男性3人を路上に引きずり出して大勢の人々の前で絞殺した。

 ダルースは著名歌手のボブ・ディラン(Bob Dylan)氏の故郷であり、1965年の楽曲「廃虚の街(Desolation Row)」の歌詞にはこの事件が部分的に描かれている。

 同市はこのリンチ事件について謝罪し、2003年に犠牲者3人の追悼碑を建立。

 メイソンさんはこの男性3人のような運命を免れたものの、メイソンさんとタスケンさんが共に淋菌(りんきん)感染症にかかっていたことが理由の一つとなり、メイソンさんに禁錮30年の有罪判決が言い渡された。

 1923年に有罪取り消し要求が申請された際、当時の郡検事長は「もし彼が白人だったならば、有罪判決を受けたかどうか疑わしい」と述べている。(c)AFP