■分断された島

 ニコス・ヌリス(Nikos Nouris)内相はAFPに対し、キャンプの代わりになるのは、悪徳大家が運営する都市部の危険な宿泊施設だと説明した。同相は「われわれは大勢の移民を抱えているが、うち75%は難民ではない」と強調し、亡命手続きと本国への送還を迅速化させたい考えを示した。

 EUによると、人口比率で調整したキプロスの1か月あたりの亡命申請数は、ギリシャの3倍となっている。

 EU最東端に位置する加盟国で、トルコ沿岸部からわずか80キロしか離れていないキプロスの移民流入問題は、その歴史に根差している部分もある。

 キプロスでは1974年に軍事衝突が発生し、キプロス共和国の支配する南部とトルコの支援を受けている北部とに分断された。北部の北キプロスを承認しているのはトルコだけだ。

 近年、北部がボートでやってくる増え続ける移民の玄関口になっている。その多くは前述のナイジェリア人男性のように、衝突を抑止するため国連が設置した緩衝地帯を越えてくる。この緩衝地帯は現在、公には新型ウイルス対策として封鎖されていることになっている。

 ヌリス内相は、トルコから中央ヨーロッパへ抜けるいわゆる「バルカンルート」が2015年に閉鎖されたため、キプロスでの亡命申請は同年の2253件から2019年には1万3648件に跳ね上がったと説明する。

 亡命申請は、特にシリアやカメルーンなど内戦や民族紛争で揺れる国の出身者が多い。だが今年はこれまで、インド、パキスタン、バングラデシュ出身者の申請数がこれら紛争地域から逃れてきた人の申請数を大きく上回っているという。

「われわれは難民を受け入れたいと思っている。しかし、このような人数の、経済難民全てを受け入れることは、これ以上は不可能だ」と主張した。(c)AFP/Paul Raymond