【6月28日 AFP】過密状態のキャンプに移動するか、祖国に戻るか──地中海に浮かぶ島国キプロスは、新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)下で亡命希望者に厳しい選択を迫った。

 当局は、これはコスト削減に必要な手段だとしている。キプロスは人口100万人ほどの小国だが、人口当たりの亡命申請率は欧州で最も高い。

 移民にとって状況は厳しいと、国連(UN)のテントとプレハブ小屋で集団生活を送る移民の一人である、ナイジェリア人男性は言った。ここは200人を収容するための施設だが、現在は800人余りが暮らしている。

 この男性は当初、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の影響で見捨てられそうになっていたキプロス南東のリゾート、アヤナパ(Ayia Napa)のアパートメントホテルに滞在していた。

 そこには何十人もの亡命希望者がいたが、ある日突然「(避難民キャンプ行きの)バスに乗るか、祖国に戻ることを承認する書類に署名するよう」告げられたとこの男性は語った。

「すべてが急で、書類を読む時間もなかった」

 男性は現在、首都ニコシア近郊のプルナラ(Pournara)のキャンプで、数百人の移民とともに暮らしている。5月には熱波の影響で気温が43度に達したこともあった。

 当局のこうした動きは人権団体の怒りを買った。その一つ、キプロス難民評議会(Cyprus Refugee Council)は、テントが並ぶ閉ざされた過密なキャンプで、いつ出ることが許されるのかといった確かな情報も与えられず、移民らは「非常に厳しい状況に」直面していると批判した。

 しかし、政府は、移民をホテルに収容するために必要となる年間1900万ユーロ(約23億円)の費用をもはや賄うことはできないとし、欧州連合(EU)に支援を求めている。