【6月12日 AFP】国際陸上競技連盟(IAAF、現ワールドアスレティックス<World Athletics、世界陸連>)の前会長であるラミーヌ・ディアック(Lamine Diack)被告は11日、自身の汚職に関する裁判で、ドーピング違反が発覚したロシア選手に出場禁止処分を科すのを遅らせたり、調整したりすることに合意したのは、陸上界の「経営状態」のためだったと主張した。

 16年間にわたり陸上界のトップに君臨していたディアック被告は、仏パリで開かれた裁判に出廷し、2011年のドーピング検査で失格となったロシア選手23人の処分を遅らせたのは、自分の指示だったと供述した。しかし、連盟の職員がロシア選手に対して直接的あるいは間接的に、数万ユーロの口止め料を要求していた事実を知っていたことについては否定した。

 セネガル出身で87歳のディアック被告は、「主な目的はIAAFの経営状態のためだった」「IAAFの経営状態を守らなければならず、私はそのために妥協することを覚悟していた」と主張。2012年のロンドン五輪とその翌年の第14回世界陸上モスクワ大会(14th IAAF World Championships in Athletics Moscow)にロシア選手を出場させるために、ドーピング違反による資格停止処分を遅らせたと認めつつ、その理由はロシアの外国貿易銀行(VTB)や同国国営テレビRTRなど、スポンサー候補との交渉が妨げられるのを防ぐためだったと弁明した。

 かつては五輪競技における最も強力なリーダーの一人であったディアック被告は、今回の裁判で汚職、マネーロンダリング(資金洗浄)、背任の罪に問われており、最長で禁錮10年の判決が言い渡される可能性がある。

 フランス検察は、「完全保護」と称される不当なシステムで薬物違反の汚名をすすぐために、ディアック被告が直接的あるいは間接的にロシア選手に対して345万ユーロ(約4億1800万円)を要求したと主張している。

 出場停止処分が遅らされたことにより、ロンドン五輪でメダルを獲得したロシア選手もいる。(c)AFP/Andréa BAMBINO