【6月11日 AFP】オーストラリアのスコット・モリソン(Scott Morrison)首相は11日、中国人観光客や留学生らが豪にもたらす巨額の利益を中国側が抑え込もうとする動きを見せていることを受けて、経済的な「威圧」の試みにひるむことはないと明言した。

 中国政府は先に、新型コロナウイルスが世界的に大流行する中、オーストラリア国内でアジア系の人々を標的にした人種差別事案が増えているとして、オーストラリアへの渡航を控えるよう勧告していた。

 モリソン首相は11日、中国人が人種差別的な扱いを受けたとする訴えは「ばかげている」と一蹴。ラジオ局の取材に対し「くだらない主張であり、受け入れられない」と話した。

「われわれは中国と重要な貿易関係を築いており、それが続くことを望んでいる」と首相。

 一方で、豪政府は「脅迫には決してひるまない」「威圧に対しては、それがどこから来るものであれ、わが国の価値観を売り渡したりはしない」と述べた。

 新型ウイルス流行以降のアジア系に対する人種差別は、ニューサウスウェールズ(New South Wales)州の反人種差別委員会もその増加を指摘している。

 中国政府は11日、豪への渡航中止勧告は「多数の事実に基づいている」として、その正当性を強調した。

 中国外務省の華春瑩(Hua Chunying)報道官は記者会見で「豪首相が言う『威圧』がどこから来るものなのか、私には分からない」と話した。

 その上で、「オーストラリアには、問題を直視し、自省し、豪州における中国人の安全と権利を守るための具体的措置を取るよう促したい」と述べた。

 豪政府は近年、中国が豪州や太平洋地域で影響力を強めようとする動きに反発しており、両国間の緊張が徐々に高まっている。(c)AFP