【6月12日 People’s Daily】中国江西省(Jiangxi)資渓県(Zixi)の新月シャオ族村。酒造所に入ると、10数個の大きなカメが並んでいた。酒造り職人、陳呉軍(Chen Wujun)さんはスマホで連絡をとっていた。相手は村の共産党支部第1書記の蘭念瑛(Lan Nianying)さんだ。蘭さんは全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の代表として北京で開催中の会議に出席していた。だが、2、3か月前には、大きな問題にぶつかり、頭を抱えていた。

 新型コロナウイルス感染症の流行で、観光客が激減したのだ。この村は「最も美しいシャオ族のふるさと」といわれ、住民は観光で生計を立ててきたことから、村全体が動揺した。蘭さんは「産業が1つではリスクに対応できない」と気付いた。

 考え方を改め、活路を見つけなければならない。蘭さんが真っ先に思いついたのは、紅曲酒。シャオ族伝統の酒だ。どの家でもつくれる。蘭さんは仲間と相談し、仕事がなくて家にいる数十人の住民を動員することにした。浙江省(Zhejiang)から酒造り職人も招いた。何度も試験をしたあと、香り高く甘い酒ができた。オンライン、オフラインで宣伝し、20万元(約300万円)を上回る予約を受けた。コロナ禍が発展の転機になったのだ。

 貴州省(Guizhou)畢節市(Bijie)赫章県(Hezhang)海雀村(Haique)の共産党支部書記の文正友(Wen Zhengyou)さんも全人代の代表だ。文さんは植えたばかりの漢方薬用作物が気にかかっている。

 海雀村は山奥の「貧乏集落」だったが、2016年に貧困村から脱却していた。しかし文さんはその後もふるさと振興策を考え続けた。考え着いたのが漢方用作物の栽培だった。

 海雀村は標高2300メートル。濃緑の樹海が広がっており、漢方薬用作物の栽培に適している。今年4月、225ムー(約150ヘクタール)の土地に17種類の作物を植えた。「産業が順調に発展すれば、村民が1日で80元(約1200円)稼げるようになる」と文さん。

 文さんは「産業が興れば、若者を引き留めることができ、ふるさとの活力も増す。正しい方法を見つけ、着実に実行すれば、再び貧困に舞い戻ることはない」と語った。(c)People's Daily/AFPBB News