【6月11日 AFP】(更新)米ビデオ会議サービス「ズーム(Zoom)」は11日、中国の天安門(Tiananmen)事件に関するビデオ会議の閉鎖などが米国や香港の人権活動家らから指摘されたことを受け、中国人利用者が関わる複数の会議が「中断された」ことを認めた。

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 新型コロナウイルスの世界的な大流行の中で利用者が急増しているズームだが、今回の問題発覚を受けて、同社が強権的な中国の要求に屈し、言論の自由が守られている国や地域在住のユーザーの利益を損なっているのではないかとの懸念が生じている。

 ズームはグーグル(Google)やフェイスブック(Facebook)などの競合アプリとは異なり、「万里のファイアウオール(Great Firewall)」と呼ばれるネット検閲システムを導入する中国でも、使用が禁止されていない。

 米人権団体「人道主義中国(Humanitarian China)」によると、多数の民主化活動家が死傷した1989年6月4日の天安門事件を振り返るビデオ会議をズームで行い、中国ユーザーも含め250人以上が参加。その1週間後に、同団体の有料アカウントが何の説明もなく停止されたという。この件は、米ニュースサイト「アクシオス(Axios)」が最初に報じていた。

 同団体の共同設立者で天安門事件後に中国当局から指名手配された当時の学生リーダーの一人、周鋒鎖(Zhou Fengsuo)氏はAFPに対し、問題のアカウントは10日に復旧したと明らかにした。

 ズームも、このアカウントを一時停止し、すでに復旧させたことを認めた。ズームの広報担当者は、「どのグローバル企業とも同様に、当社も事業を行っている国や地域の法律に従わなければならない。会議が複数の国にまたがって行われる場合は、各参加者はそれぞれの国の法令に従うことが求められる」 「当社は、各地の法令を順守するために取る措置に限度を設けることを目指しており、こういった問題に関係するプロセスを常に見直し、改善している」と述べた。

 香港で毎年恒例の天安門事件犠牲者追悼集会を主催してきた李卓人(Lee Cheuk-yan)氏は11日、同氏が会長を務める香港市民支援愛国民主運動連合会(Hong Kong Alliance in Support of Patriotic Democratic Movements in China)が、世界における中国の影響力に関するオンライン討論会を開催しようとしたところ、先月22日以降ズームアカウントにアクセスできない状態になっていると明らかにした。

 李氏はAFPに対し、「討論が始まる前にアカウントは一時停止となった。これは政治的な検閲なのかとズームに何度も尋ねたが、返事は一切ない」と述べた。

 影響を受けた人権活動家らは、ズームが中国共産党指導部から直接圧力を受けた可能性があると怒りをあらわにしている。人道主義中国は、「もしそうなら、ズームは独裁的政府と共謀して天安門虐殺の記憶を消そうとしていることになる」とする声明を発表した。同団体は、厳しい検閲が行われている中国にいる人たちと連絡を取る上でズームは「不可欠」なものだとしている。

 言論の自由の擁護団体「ペン・アメリカ(PEN America)」は、中国政府は同国本土以外のズーム利用者を検閲するべきではないと訴えている。

 同団体のスザンヌ・ノソル(Suzanne Nossel)会長は、「電話会社が電話会議で自身の意見を述べている人へのサービスを断ったとしたら、われわれは容認などしないだろう。デジタル空間においても同じことだ」と指摘した。(c)AFP