【6月10日 AFP】スウェーデン検察は10日、1986年に起きたオロフ・パルメ(Olof Palme)元首相(当時59)の暗殺事件に関し、最重要容疑者の名前は公表したものの、同容疑者は既に死亡しているとして、捜査を打ち切ったと発表した。同国を震撼(しんかん)させた謎の事件は、30年以上たっても未解決のまま幕を閉じた。

 故パルメ元首相は1986年2月28日夜、首都ストックホルムの映画館からリスベス(Lisbeth Palme)夫人と徒歩で帰宅する途中、何者かに背後から射殺された。パルメ氏はこの日、ボディーガードを早く帰らせていた。

 現場は血の海となり、その場に倒れたパルメ氏を残して犯人は逃走した。

 長年の捜査で1万人以上が事情聴取を受け、134人が自白したにもかかわらず、結局真犯人と特定された者はいなかった。これまで800丁近い拳銃が調べられてきたが、凶器となった銃は今日まで見つかっていない。

 今回最重要容疑者として名前が公表されたのは、パルメ氏の左派政策に強く反対していた広告コンサルタントのスティグ・エングストロム(Stig Engstrom)容疑者。事件発生当時52歳だった同容疑者は、2000年に66歳で死亡している。

 クリステル・ピーターソン(Krister Petersson)検事正は報道陣に対し、「エングストロム容疑者は死亡しているため、刑事責任を問うことはできない。よって捜査の打ち切りを決定した」と述べた。

 エングストロム容疑者は、捜査の初期段階で目撃者として事情聴取を受けていたが、証言を何度も翻していたことから、警察から信用に値しないとみなされていた。

 メディアは長年、同容疑者が自身の犯行を隠蔽(いんぺい)するために話の内容を変えていたのではないかと指摘していた。

 捜査打ち切りの発表を受けて、パルメ氏の息子は公共放送スウェーデンラジオ(Swedish Radio)に対し、「犯人はエングストロム容疑者だと、私は思っている。現状を考慮すれば、捜査終了は妥当だと思う」と述べ、検察当局は正しい判断をしたとの見方を示した。(c)AFP/Pia OHLIN