【6月10日 AFP】バッタの大群による被害で食料供給危機に直面するパキスタンで、対策の一環としてバッタを養鶏の飼料とする試みが行われている。

 パキスタンのイムラン・カーン(Imran Khan)首相は、穀倉地帯パンジャブ(Punjab)州での実証実験の拡大を承認している。

 過去25年で最悪とされる蝗害(こうがい)に見舞われた同国では、農業の中心地で農作物が壊滅的な被害を受けており、農家らは収入の確保に奔走している。

 バッタを飼料として利用するプロジェクトは、食糧安全保障・研究省のムハンマド・クルシード(Muhammad Khurshid)氏と生物工学学者のジョハール・アリ(Johar Ali)氏が始めたもので、紛争で荒廃したイエメンで飢餓対策にたんぱく質豊富なバッタを食べるよう推奨した取り組みを参考にしている。

 実験では村人たちが集めたバッタを当局が買い取り、乾燥して粉末状にし、飼料に混ぜる。場所は、バッタが飼料用に適さなくなってしまう殺虫剤を農家が使用していなかったことから、パンジャブ州オカラ(Okara)地域が選ばれた。

 クルシード氏はAFPに対し、「まず自分たちでバッタの捕獲方法を学び、地元住民に教えた。網は使い物にならない」と説明した。バッタは夜になると木や植物に群れをなして止まっており、日が昇るまでの涼しいうちは動かないため捕まえやすい。

 バッタ1キロ当たり20パキスタン・ルピー(約13円)が支払われたため、地元住民らは夜通しバッタを採集した。20トン集まった時点で当局の予算が尽き、プロジェクトは一時中止されることになった。

 食糧安全保障・研究省はこのほど、2月に行われたこの実証実験の結果を公表した。また、他の地域にもこの実験を広げる準備を進めているという。

 集められたバッタは、同国飼料生産最大手ハイテク・フィーズ(Hi-Tech Feeds)に送られる。同社は養鶏飼料に使われている大豆の10%をバッタで代用している。

 このプロジェクトがバッタの大群による農作物被害を解決するわけではないが、大打撃を受けた農家に新たな収入源を提供すると同時に、バッタ駆除のための殺虫剤散布に頭を悩ませていた当局に対する圧力も軽減することができる。

 バッタの大群は今年、アフリカ東部やアラビア半島(Arabian Peninsula)一帯、インドの一部にかけて発生し、農作物に被害をもたらしている。専門家らは、今月から始まるモンスーンでの降雨によってバッタの数が爆発的に増える恐れがあると懸念している。

 映像は同国の農業研究協議会がパンジャブ州で撮影・提供、撮影日不明。(c)AFP/By Kaneez Fatima, with Ashraf Khan in Karachi