【6月10日 AFP】米国をはじめとする各国で人種差別と警察の暴力に抗議するデモが拡大し、放送業界が配信内容の見直しを進める中、動画配信サービスHBOマックス(HBO Max)は9日、映画『風と共に去りぬ(Gone with the Wind)』をストリーミング配信のコンテンツから削除した。

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 南北戦争を舞台にした1939年公開の同作はアカデミー賞(Academy Awards)9部門を受賞し、インフレを考慮した興行収益で歴代トップに君臨する歴史大作だが、奴隷が不満を言わず、また奴隷所有者が英雄のように描かれているという部分は批判の的にもなっている。

 HBOマックスはAFPへのコメントで、「『風と共に去りぬ』には残念なことに、現在の米国社会でも当たり前となっている民族・人種差別的な表現がみられる」「このような人種差別的な表現は当時も間違っていたし、現在でも間違っている。これらの表現について説明も非難もせず、作品を配信し続けることは無責任だと考えた」と説明した。

 アフリカ系米国人のジョージ・フロイド(George Floyd)さんが警察の拘束下で死亡した5月25日以降、反人種差別デモは全米に拡大している。また、市民の間には警察の改革を要求する動きや、奴隷制を敷いた南部連合国に関する像など、人種差別の歴史の象徴を排除する動きも出ている。

『それでも夜は明ける(12 Years A Slave)』の脚本を担当したジョン・リドリー(John Ridley)氏は8日付のロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)の論説に寄稿し、『風と共に去りぬ』について「表現において基準を満たしていない」だけでなく、奴隷制の恐ろしさを無視し、「有色人種の最も痛ましい偏見」を永遠のものとしていると指摘し、排除されるべきだと主張した。

 HBOマックスは歴史的背景に関する議論や説明を追加して配信を再開する予定だが、「差別は存在しなかった」と主張することになりかねないとの理由で編集は行わない意向を示している。(c)AFP/Andrew MARSZAL