【6月10日 AFP】(写真追加)北朝鮮の人権問題を担当する国連(UN)のトマス・オヘア・キンタナ(Tomas Ojea Quintana)特別報告者は9日、北朝鮮の食料不足が深刻化しており、中国国境封鎖などの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の影響で一部の住民は「飢えている」として、北朝鮮政府と国際社会に緊急の対応を呼び掛けた。

 これまで国内で確認された新型コロナウイルス感染者は一人もいないと主張する北朝鮮は、さまざまな感染拡大防止策を取っている。

 北朝鮮は5か月前に中国との国境の封鎖を決定し、数千人規模の人たちを孤立化させた。このことが状況を悪化させたとキンタナ氏は指摘する。今年3月と4月の北朝鮮の対中貿易は90%以上減り、国境地帯に暮らす多くの人が収入を失ったという。

 キンタナ氏の声明は、「大都市でコッチェビ(路上で生活する孤児)を含むホームレスが増加し、医薬品価格が急騰したという複数の報告がある」 「1日に1~2回しか食事をしない家庭やトウモロコシしか食べない家庭も増えており、一部は飢えている」としている。

 キンタナ氏は、兵士も食料不足に苦しんでいるという報告に言及し、刑務所、特に秘密収容所の状況にも懸念を表明。過酷な労働や食料の欠乏、過密な収容人員と感染症によって死亡する被収容者が多いという証言に触れ、こういった状況に弱い被収容者の釈放を検討するよう北朝鮮政府に求めた。

 また、「今回のパンデミック(世界的な大流行)はDPRK(北朝鮮)に極めて厳しい経済的苦難を与えている状況であり、私は国連安保理(UN Security Council)に、人々の生活と政府の対応能力が受けた衝撃に鑑みて制裁を再考することを勧める」と述べた。(c)AFP