【6月14日 東方新報】中国で新型コロナウイルス感染症の予防・治療薬として、チベット医薬が注目を集めている。 ――全国政治協商委員でもある青海省(Qinghai)党委常務委員のゴンポタシ氏は先月27日、北京で開催していた全国政治協商会議の場で、青海省としてチベット医薬科学研究に財政、金融支援を行うよう中央に提案したことを明らかにした。チベット医薬産業を国家戦略に組み入れ、民営チベット医薬診療所を省外にも拡大していくという。

 チベット医薬は中国伝統医薬の一分野で、チベット自治区(Tibet Autonomous Region)の希少な高山の動植物や鉱物を使った医薬品を独特の方法で処方する、ラマ僧の間で伝えられてきた伝統医薬。特に慢性病や高山病治療などにも大きな効果を発揮するものが知られている。青海省はチベット医薬資源の宝庫で、チベット医薬生産企業が15社あり、公立のチベット医薬医院が42院あるが、これを新型コロナウイルス感染症の流行を機に、さらに広く広め、産業として発展させていきたい考えだ。

 青海省の多くの薬材はすでに人工的に栽培されており、チベット医薬は省経済の大きなけん引力にもなっている。その医学・医薬の効果は近年、国内外からも注目され、チベット医薬事業の潜在力は大きい。

 ゴンポタシ委員の提案によれば、チベット医薬材の栽培・繁殖に対して、財政から予算を投じ、金融支援を講じ、科学研究プラットフォームを作り、新薬開発や2次開発を発展させ、チベット医薬の現代化、産業化、ブランド化のレベルを上げていくという。青海省のチベット医薬産業を政府重点支援産業とし、融資審査もスムーズに行い、金利を引き下げるよう求めた。

 また青海大学(Qinghai University)にチベット医薬学科を設置し、チベット医薬の従事者のレベルアップをはかり、チベット医薬薬材生産、検疫検査、流通、保険サービスなどの領域を支えるハイテク複合型人材を育成するという。目下、中国でチベット医学・医薬の専門家を養成する最高学府として教育部が批准しているのはチベット自治区のチベット医学院だけだ。

 このほか国際学術交流や展示会などを通じて、チベット医薬の独特の理論や産品を国際社会に広め、青海省のチベット医薬企業を「一帯一路(Belt and Road)」経済一体化構想を通じて中央アジアや、欧州、南アジアにも普及させていこうという。

 甘粛省(Gansu)でも新型コロナウイルス感染症の予防、治療にチベット医薬を使用し、効果を上げている。甘粛省健康衛生委員会は、「全省で新型肺炎予防治療に中医薬を広く使用することに関する通知」を発表し、チベット医薬を含む「甘粛式の中医薬」の中に、新型コロナウイルス感染症に効果があるものがある、としている。甘粛の中医薬処方は、すでに武漢に空輸され、その中にはチベット医薬顆粒(かりゅう)製剤など2.9万袋、チベット薬1280箱などが含まれているという。

 甘粛省夏河県(Xiahe)のチベット医学医院の桑老(Sanglao)主任医師によれば、新型コロナウイルス感染症予防・治療用のチベット医薬は、その他のチベット医薬と同じく、臨床に応用する場合はチベット医薬の基礎理論に従い、患者の年齢や体質、個人の生活習慣、疾病の性質、症状の部位や重症度に合わせて処方し、病気の変化に合わせて随時、使用薬を変更し、相応の薬剤の形を選択していくことが非常に重要だとしている。 (c)東方新報/AFPBB News