■萎縮せずに外に出るべきだ

 坂氏は、2011年に地震が起きたニュージーランド・クライストチャーチ(Christchurch)で段ボール製の大聖堂を建設するなど、自身の建築プロジェクトで世界中を旅してきたが、新型ウイルスの影響で日本から出ようとしない学生が増えるのではないかと懸念する。

「今以上に日本の学生が萎縮して、日本が居心地がいいからと海外に出なくなったら、危機的な状況だと思います。それを僕は一番心配しています」

 日本は高齢化が進み、世界でも有数の人口密度の高い都市が複数あるにもかかわらず、新型ウイルスの感染状況は比較的穏やかで、(6月19日時点の)死者は935人、感染者は約1万7600人にとどまっている。

 坂氏は、新型ウイルスの感染拡大は、混み合う公共交通機関の乗車率緩和につながる「非常に大きなチャンス」となると指摘。「あれだけ通勤すること自体、苦痛なわけですから、そんな苦痛な状況で1日30分とか1時間とか費やすわけですから。(公共交通機関の慢性的な混雑状況は)絶対直すチャンスだと思います」

「だからと言って(外に)行かなくていいわけではないし、もっともっと出るべきだと僕は思います」

 坂氏は「何でも技術で解決しようという方向に行くのは危険です」「人が会わなくてもいい、オンラインで会議をやればいい。そういうこと自体間違っていると思います」と話し、材料にじかに触れることは依然として優れた建築の要であり、技術では代用できないと主張する。

 坂氏はさらにこう続けた。「オンラインでできることには限界があって、それに頼るべきでないことはたくさんあります」「これだけ世界がグローバルにつながっていて、日本だけ幸せでぬくぬくとできるってことはもうあり得ないですからね。世界中の人たちを幸せに、あるいは一緒に仕事をする。そういうことに日本人が参加できなかったら、日本の幸せや平和はないですよ、将来」 (c)AFP/Miwa SUZUKI