コロナ追跡アプリ、公衆衛生と個人情報保護めぐりせめぎ合い
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■政府や企業が「国民の意識を操作」するようになる
韓国は、感染者が訪れた場所を知らせる警報を携帯電話で広範囲に発信するとともに、隔離された人全員に追跡アプリをインストールするよう命じた。個人情報保護法の施行が延期されたタイでは、市民が店舗や飲食店に出入りする際にバーコードをスキャンするアプリが導入されている。
こうした動きに対し、タイ・ナレースワン大学(Naresuan University)の政治学者ポール・チャンバース(Paul Chambers)氏はAFPの取材に、「新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は、権力を長期にわたって強化・維持しようとするアジアの国々の政府にとって好都合な論理的根拠を提供している」と指摘する。
同様の議論は欧米でも起こっている。
専門家らが指摘するように、追跡調査アプリが効果を発揮するには全住民の6割以上が使用する必要があることを考えると、国民の信頼が重要になる。
北大西洋条約機構(NATO)の元医療アドバイザーで疫学者のバンジャマン・ケリオー(Benjamin Queyriaux)氏は、「最新技術には効果があるかと言えば、確かにそうだ。危険なものかと言えば、それもまた確かだ」と述べている。
欧州委員会(EC)は、接触追跡アプリを通じて収集されたデータについて、暗号化を必須として一極集中型データベースへの保存を禁止するとしている。
フランスは、米グーグル(Google)と米アップル(Apple)が共同で提供する追跡技術を採用しない方針を示しているが、同国のデータ保護機関「情報処理・自由全国委員会(CNIL)」は、政府の支援を受けて開発され、任意でダウンロードできるアプリを承認している。
イスラエルの歴史学者ハラリ氏は、「政府や企業がこぞって国民の生体認証データを収集するようになれば、国民が自分の個人情報を自分で知るより、はるかに多くのことを企業や政府が把握する可能性がある」と警告。その結果、政府や企業は「国民の意識を予測するだけでなく操作し、製品にせよ政治家にせよ、自分たちが望むあらゆるものを国民に受け入れさせる」ことが可能になると同氏は述べている。(c)AFP/Didier LAURAS with AFP bureaus