コロナ追跡アプリ、公衆衛生と個人情報保護めぐりせめぎ合い
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【6月10日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として濃厚接触者追跡アプリの導入を検討する政府が増える中、公衆衛生上のデータを収集する必要性と個人情報の権利をめぐるせめぎ合いがにわかに注目を集めている。
濃厚接触者の追跡システムの技術は、経済活動の再開や自宅待機からの解放につながり、保健当局にとってはウイルス拡散の監視を可能にする打開策になるとうたわれている。だが、政府や企業が感染拡大の抑制という名目で収集した個人情報が、政治的・商業的な利益追求や専制国家による抑圧に悪用されるのではないかと懸念する声も多い。
イスラエルの歴史学者ユバル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)氏は、新型コロナウイルス流行の最盛期に英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に寄稿し、「細心の注意を払わなければ、今回の流行が監視の歴史における重要な分岐点となる可能性がある」と記している。
公衆衛生当局にとっては技術の急速な向上が願ってもない支援となる可能性がある一方、「マイナス面は、言うまでもなく、これが新たな恐ろしい監視制度に正当性を与えてしまうことだ」と、ハラリ氏は主張する。
世界中の死者が40万人を超えた(6月10日現在)新型ウイルスの大流行に最初に見舞われたアジアの国々は、追跡アプリを率先して利用し始めたが、ユーザー本人の意思とは関係なく導入されるケースが多かった。
感染者が最初に確認された中国で公開された複数のアプリでは、携帯電話ネットワークを介したジオロケーション(ユーザーの位置追跡)技術や、鉄道と航空路による移動や高速道路などの検問所で収集されたデータなどが使用されている。
アプリの使用は組織的かつ強制的に行われ、中国政府がロックダウン(都市封鎖)を解除して感染拡大を食い止めることができたのも、こうしたアプリの貢献が大きいと評価されている。