【6月6日 AFP】ロシアの裁判所は2日、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領への批判を繰り広げていることで知られるシベリア(Siberia)出身の自称霊媒師(シャーマン)に対し、精神科病棟に収容する決定を下した。人権団体は反体制派の口封じを狙う抑圧的な措置だと非難している。

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 自称霊媒師のアレクサンドル・ガビシェフ(Alexander Gabyshev)氏は昨年、プーチン氏を「追い払う」ためにシベリア・ヤクーツク(Yakutsk)の自宅から、大統領府がある約8000キロ先の首都モスクワを目指して徒歩で出発。所持品を乗せた荷車を引いて幹線道路を歩き、旅の途上では少人数の支持者を集め、そうした人々との会合も町々で行った。

 だが人権団体によると、ガビシェフ氏は最初の旅で警察に行く手を阻まれ、昨年12月に始めた2回目の旅も止められた。その後、3回目の旅に出ることを発表した同氏は自宅で拘束され、先月には精神科病棟に移送された。

 ヤクーツクの裁判所は今月2日、強制収容の延長を決定。期限は明らかにされていないと同団体は指摘している。

 人権団体「オープンロシア人権プロジェクト(Open Russia Rights Project)」の幹部アレクセイ・プリャニシニコフ(Alexei Pryanishnikov)氏は、裁判に関する文書にガビシェフ氏の健康状態が言及されておらず、同氏は「身の程知らずにも」「プーチン氏の退陣」を願っているとだけ記されていたと述べた。

 ガビシェフ氏の支持者らは2日に法廷で証言する予定だったが、出廷する途中で当局に拘束されたと、同団体は付け加えている。

 英ロンドンに拠点を置く国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)はガビシェフ氏の解放を求め、同氏の収容決定は医学的根拠ではなく政治的根拠に基づいていると主張。「(同氏は)プーチン氏が嫌いだと声を上げただけで国家の敵にされている」と述べている。

 反体制派を精神科病院に収容することは、旧ソ連時代には懲罰的な精神医学的措置として知られる慣例だった。1980年代後半まで、体制に批判的な人々は「緩徐進行型の統合失調症」または一種の偏執症と診断され、施設に収容され得た。(c)AFP