【6月17日 AFP】ロシアは長年、国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙飛行士を輸送する立場を独占してきたが、米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)がこのほど有人飛行を成功させたことで、その地位は失われた。ロシアの宇宙局は、民間企業として世界初の有人飛行を成し遂げた米国とスペースXの創設者イーロン・マスク(Elon Musk)氏に祝辞を贈ったが、専門家らは、ロシア国営宇宙開発企業ロスコスモス(Roscosmos)にとって発奮材料になったはずだと指摘する。

 先月30日の打ち上げは米国にとって、スペースシャトル計画が2011年に終了してから初となる米領土内からの打ち上げとなった。それまで唯一の飛行士輸送を担っていたのが、スペースシャトルよりシンプルで信頼性の高いロシアの宇宙船「ソユーズ(Soyuz)」だ。

 フランス国立科学研究センター(CNRS)の宇宙政策の専門家イザベル・ソベズベルジェ(Isabelle Sourbes-Verger)氏は、「(ロシアが独占してきた)宇宙飛行はロシア政府にとって、ソユーズを建造し続け、ISSをめぐる交渉で大きな発言力を維持する上で予期せぬチャンスをもたらしてきた」と指摘する。

 また、ロシアの宇宙局は宇宙飛行士の輸送で大金を稼いできた。ソユーズの1座席にNASAが支払っているのは約8000万ドル(約86億円)だ。

 モスクワにあるツィオルコフスキー宇宙アカデミー(Tsiolkovsky Space Academy)の専門家アンドレイ・イオニン(Andrei Ionin)氏は、スペースXが米宇宙飛行士全員の輸送を受け入れるようになると、「(ロシア側の)年間の損失は2億ドル(約215億円)では済まず、約20億ドル(約2150億円)の予算で運営されているロスコスモスにとって大きな痛手になる恐れがある」との見方を示す。

 スペースXを立ち上げた野心的な起業家マスク氏は、自社の宇宙船1座席の料金を6000万ドル(約64億円)としているが、ロスコスモスのドミトリー・ロゴジン(Dmitry Rogozin)社長は、ロシアは価格を30%引き下げる予定だと発表している。