【6月16日 AFP】アマンダ・ラーソン(Amanda Larson)さん(35)が、米国最大の先住民居留地「ナバホ・ネーション(Navajo Nation)」にある自宅から数キロ離れた給水所に車を止めると、3人の子どもがピックアップトラックの荷台に並べてあった大きなボトルに水を詰めた。

 66ガロン(約250リットル)の水は家族の飲み水や洗濯、入浴に使われる。2、3日後にはまた、背中が痛くなる水くみを繰り返さなければならない。

「子どもたちが他のみんなのようシャワーに飛び込んでいって体を洗えないなんて、恥ずかしいし、情けないし、悲しい」と、ナバホ・ネーションの南東の端に位置するソロー(Thoreau)のプレハブの自宅に戻ると、保育士として働くラーソンさんはAFPに話した。

 ラーソンさんは浴室に置かれた大きなプラスチック製の入れ物を指さしながら「この二つの容器が、私たちが学校や仕事に行く準備をするための道具だ」と言った。

 米国の疾病対策予防センター(CDC)によると「手を洗うことは簡単で、病原菌の増殖を防ぐ最も効果的な方法の一つ」だ。この言葉は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)のさなかにしつこく繰り返されている。

 だが、ナバホ・ネーションに住む17万8000人の約30~40%は上下水道が利用できない環境にあり、手を洗うのは単純に不可能だ。

 このことが、居留地内で新型ウイルスの感染が増加している主な理由の一つとみられている。6月上旬時点で5500人以上の感染が確認され、死者は250人に上っており、米国内で死亡率が最も高い場所の一つとなっている。